リハビリテーションとは
リハビリテーションは、ラテン語で、re(再び)+habilis(適する)から成り立っています。リハビリテーションは単なる機能回復ではなく、障害に関わらず「人間らしく生きる権利の回復」や「自分らしく生きること」が重要とされており、そのために行われる技術や支援など、すべての活動や考え方のことを指します。多くの方がリハビリテーションという言葉に対して「元の状態に戻す」といったイメージを持っている人は多いと思いますが、実際の医療現場では後遺症などにより元の状態に戻ることが難しいケースが多いです。近年では「リハビリテーション=元の状態に戻すこと」ではなく、「今のその人にあった生活を獲得すること」と考えるように変わってきています。歩行訓練などの機能訓練だけでなく、職場復帰に向けた職業訓練や、住宅改修などの環境整備、介護保険サービスなどの社会資源の活用などもリハビリテーションに含まれます。そのために、医師・看護師や専門職である、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーなど様々な職種が関わっています。
リハビリテーション科の紹介
理学療法について
当院では特に退院支援について力を入れています。当市は海、山に囲まれ、生活様式が多種多様であり、また高齢化率も高く、高齢者同士の家族も増えています。その中で、私たちは、地域で生活を続けたい方や、生きがいを持って生活したい方に対し、私たちの専門である、座す、立つ、歩くなどの基本的な動作練習を中心に、他部門、多職種と連携し、目標に向けて取り組んでいます。
整形外科疾患の中で、学生を中心とした、スポーツリハビリテーションの対応も行っており、けがをしにくい体づくりのための筋力強化訓練、ストレッチ指導、動作指導など、競技に合わせた対応をしています。また、必要に応じて、足の痛みにより、歩くことがつらい方や、⻑く歩けない方に対して、靴の中に入れるインソールの作成も行っております。
心疾患の方に対して、心臓リハビリテーションを実施しており、体調の管理を行いながらの運動や生活に対しての指導なども行っております。
作業療法について
その人らしく生活を送ることを大切にしています。病気や怪我をしても「また好きだった畑に行きたい」「家族のために料理を作りたい」といった大切にしている作業は人それぞれ違います。私たちはその人の大切にしている作業に焦点を当てて、退院後の生活目標を一緒にたてます。そのために不足している筋力や体力をつける運動を行う、立って行っていたことを座って行えるように動作の工夫を提案する、ご自宅の環境に合わせて作業が行いやすくなるようご自宅を訪問して環境調整を行うこともあります。また、その一つとして職業復帰や自動車運転再開支援のための関わりも行っています。
言語聴覚療法について
脳卒中などの脳の病気によっておこる言語障害や高次脳機能障害(注意・集中力、記憶力の低下など)に対する検査・訓練を行い、自宅生活や復職など社会復帰が出来るように支援しています。また、外来リハビリにて、自動車運転再開支援にも取り組んでいます。
他にも、食べ物を飲み込めない、よくむせてしまうなどの摂食嚥下障害に対して検査・訓練を行い、安全に食事が食べられるように、食事環境や内容の検討も行っています。特に、地域の高齢化に伴い、加齢や病気により摂食嚥下障害の方が多いため、嚥下訓練に積極的に取り組んでいます。誤嚥や窒息のリスクが高い患者様には、嚥下造影検査を行い、外から見えない飲み込みの状態を確認し、ご本人様やご家族様へ食事指導も行っています。
当科実績
特にことわりのない情報は令和3年度(2021 年度)です
施設基準
- 脳血管リハビリテーションI
- 運動器疾患リハビリテーションI
- 廃用症候群リハビリテーションI
- 呼吸器疾患リハビリテーションI
- 心大血管リハビリテーションI
構成スタッフ 21名
- 理学療法士
- 12名
- 作業療法士
- 6名
- 言語聴覚士
- 2名
- 事務員
- 1名
資格取得及び各種講習受講終了者(2022 年度現在)
各種資格取得者
- 呼吸療法認定士
- 2名
- 心臓リハビリテーション指導士
- 1名
- 心不全療養指導士
- 1名
- 介護支援専門員
- 1名
- 住環境コーディネーター
- 1 級:1名
2 級:8名
3 級:1名
- 認知症ライフパートナー
- 1名
- 福祉用具プランナー
- 1名
各種講習受講終了者
- MTDLP
- 基礎:4名
基礎・実践:1名
- 臨床実習指導者
- 9名(理学療法士 6名、作業療法士 3名)
- 地域ケア個別会議助言者
- 6名
取り扱い患者数:1779名(入院:1438名 外来:341名)
疾患別リハビリテーション内訳
- 脳血管疾患リハビリテーション
- 314名(入院:266名、外来:48名)
- 運動器疾患リハビリテーション
- 682名入院:405名、外来:277名)
- 廃用症候群リハビリテーション
- 763名(入院:762名、外来:1名)
- 心大血管疾患リハビリテーション
- 15名(外来:15名)
全体的には脳血管疾患、運動器疾患、廃用症候群の各リハビリテーション患者がおおよそ3割程度ずつ占めますが、外来患者は運動器疾患の患者様が多いことがわかります。
患者の日常生活動作の改善状況
以下に当院では特に多い廃用症候群の患者様のリハビリ開始時と終了時の日常生活動作(バーセルインデックス)の変化を示します。もともとの入院前の生活状況を考慮するべき ですがリハビリ開始時 0〜20 点のほぼ全介助状態の方が改善する割合は 27%余りです。その他 20〜80 点の方はおおよそ 7 割が改善している状況です。
リハビリ見学について
年間約 350 件実施
当院は「リハビリ見学」と称して、いわゆる退院調整(現在の状態をご家族に見ていただき、退院後のイメージ作りや退院準備のために必要な情報提供など)を多く行っています。
病気が落ち着き「退院です」といわれてもご本人ご家族は正直困ってしまうものです。ご家族、ケアマネージャー、MSW、担当リハビリスタッフなどが主にリハビリ室に集まり、ご本人を交えて自宅等に戻られても困らないように問題点等解決にあたっています。
心臓リハビリテーションについて
1. 心臓リハビリテーションとは
心臓病になると心臓の働きが低下し、安静治療などにより体力が低下します。そして生活に支障をきたし、精神的にも自信を無くし、その人らしい生活がどんどんできなくなっていくのです。
心臓リハビリテーションの役割は、体力を回復させ、心臓病の原因になっている動脈硬化などを改善させ、再発、再入院を防ぎ、できる限りその人らしい生活を継続していけるように援助していくものです。あくまでも患者様が可能な限り主体的に自分の病気を自らが管理し、そして自らが生活を守ることができるようになることが目標となります。
それらが実現できるように知識や技術の習得などその人に合った運動療法をはじめ、栄養指導や服薬指導、そして生活指導など包括的なリハビリテーション手段をご提案いたします。そのために患者様、ご家族様と対話を行いながら最良な方法が決定できるように心がけています。リハビリテーション科では特に運動療法中心に行います。何かご心配なことがございましたら、まずはかかりつけ医師やリハビリテーション 担当にご相談ください。
2. なぜ心臓リハビリなのか
わが国は未曽有の超高齢社会を迎え、平均寿命も世界で1,2位を争うほどです。しかし、心疾患での死亡率は増加の一途をたどっており、現在は悪性新生物(がん)に次いで死亡率第2位となっています(図1)。特に高齢者の心不全はどんどん増加(図2)しており、最後まで元気で「ピンピンコロリ」というふうにはいかない状況なのです。生活をどのように維持していくか、大きな課題となっています。
図1. 主な死因別にみた死亡率(人口10万対)
図2. 心不全の患者数
2018年に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器対策基本法)が成立しました。また各自治体もそれを基に循環器病対策推進基本計画を策定することになっており、新潟県では、2023年2月現在、計画期間が令和4〜5年の計画がホームページに掲載されています。
図3. 新潟県循環器病対策推進計画概要
これによると目標として
- 健康寿命の延伸
- 脳血管疾患、心疾患による年齢調整死亡率の減少
以上2つを掲げています。いくら寿命が延びても寝たきりの期間が増加するのでは意味がありません。また、例え病気を持っていてもそれらをコントロールできれば生活が守られていきます。それらが実現できるよう、地域の皆様と一丸となって進めてまいります。
ちなみに心不全とは病名ではなく、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」(2016年に日本循環器学会と日本心不全学会により定義)と表現されており、心臓が悪いために起こる症状の総称です。図4は「病みの軌跡」とも呼ばれているもので、心不全の状態が進行するとどんどん右側に移行しどのような状態になるのかを表しています。心不全を発症して入院治療を行うとステージCとなります。それらを繰り返していくと徐々に機能低下が進み最終的に寿命を迎えます。残念ながら、その状態は左側には向かわないとされており、よって、いかにその進行をストップ(再入院を防ぐ)させて生活を守るかが大切になります。
そのための一つの方法として心臓リハビリテーションがあります。
図4.心不全とそのリスクの進展ステージ
3. 心臓リハビリテーションの体制など
- 対象疾患
- 心筋梗塞、心不全、閉塞性動脈硬化症など
- スタッフ
- 循環器医師3名(クラーク1名)
リハビリスタッフ2名、看護師1名
その他必要に応じて栄養士、薬剤師も介入
また、臨床検査技師が心肺運動負荷試験(以下CPX)を実施
(心臓リハビリテーション指導士2名、心不全療養指導士1名資格取得)
- 実施
- 毎週火曜日、水曜日、金曜日(病院診療日)の13:30~14:30
- 場所
- リハビリテーション室
- プログラム
-
- バイタルチェック(問診、リハビリ実施の可否など状態を判断)
- 医師の診察
- ストレッチング、体操
- レジスタンストレーニング(筋力強化など)
- 有酸素運動(心電図モニター装着、自転車エルゴメーターを使用)
- ストレッチング、体操
- バイタルチェック
- その他
- 問診等では生活状況などを把握し、問題点の把握に努めています
情報共有や問題点の検討のためカンファレンス1回/2週実施
適時、CPXを実施、その人の体の状態から問題点を把握し、それらに基づいて適切な運動処方の決定、心臓リハビリの効果などを評価しています
4. 実施状況
(1)患者情報:2021年4月〜2023年1月
主な疾患名:心筋梗塞、心不全、閉塞性動脈硬化症、心疾患術後など
男性 | 女性 | |
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患者数 | 16名 | 4名 |
平均年齢 | 76.0歳(65~87歳) | 73.2歳(63~84歳) |
平均実施期間 | 21.6か月(1.5~67.8か月) | 32.0か月(11.9か月~67.8か月) |
(2)実施件数:2022年度は昨年度より実施件数が増加傾向にあります
心臓リハビリ実施件数
標準リハビリテーション実施期間は5か月ですが、若い方はお仕事の都合などで短くなる方もおり、またリハビリテーションが必要な方でも通院できる環境が無くリハビリテーション自体ができないケースも多いです。また、通院をやめると自己管理が不十分な方や不安な方などはどうしても⻑期間のリハビリテーション実施となります。今後は病院だけでなく地域を含め、何が必要なのかを考察し、どうフォローアップ環境を整えていくか、そして特に心不全の方においては如何に再入院を防いでその人の生活を守ることができるか地域全体としても考えていかなくてはならない大きな課題があります。
5. 心臓リハビリテーションのリスクについて
「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」2021 年度改訂版によると
心リハの安全性に関する報告について、日本心臓リハビリテーション学会が推奨する心リハプログラムに基づく運動療法においては277,721人・時間あたりのイベント(AMI、心停止、死亡)発生がなかったとされ、心不全に対する運動療法についても、運動療法実施群と非実施群においてイベントに差がなかったことが報告されている。
(心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン 2021,p37 より引用)
とあり、運動療法をしてもしなくてもが事故発生の差はなく、かつ、かなり事故率が 低いこともわかっています。また、当院においても 2013 年より開始しておりますが今 のところ重篤な心事故は 1 件も起きてはいません。しかし、事故はゼロという意味で はありません。逆にいつ起こるかわからないことであり、リハビリテーション科では細心の注意を払って実施しています。
当院の心臓リハビリテーションはすべて監視下に行われており、運動強度については心肺運動負荷試験や自覚的運動強度を目安に行い、異常が認められた場合、即座に医 師に報告して指示を仰ぐ体制をとっています。
6.これから
当科としては、今後コロナ過で行うことが困難だった教育啓発活動にも力をいれたいと考えております。その際にはぜひご意見などもお聞かせください。
7.心臓リハビリテーション関連のホームページや資料
ホームページ(医療従事者向けですが、一般の方向けの情報もあります)
- 日本心臓リハビリテーション学会(https://www.jacr.jp/)
- 日本循環器学会(https://www.j-circ.or.jp/)
- 日本心不全学会(http://www.asas.or.jp/jhfs/)
- 日本理学療法士協会(https://www.japanpt.or.jp/pt/)
資料(一般の方向けですが、当科でもリハビリテーションに活用しています)
- ジャパンハートクラブホームページ(https://npo-jhc.org/)
- 「心臓病と運動」シリーズ パンフレット「虚血性心臓病の再発を防ぐために」改訂版 PDF(https://npo-jhc.org/image/pdf/saihatsu.pdf)
- 「心不全の心臓リハビリテーション」改訂版 PDF など (https://npo-jhc.org/image/pdf/shinfuzen.pdf)
スポーツリハビリテーションについて
当院では、スポーツによる怪我や成⻑期に起こりやすいスポーツ障害に対して整形外科医の指示のもとリハビリテーションを行っています。
当院へは小・中・高校生、成人と幅広い年代の方が受診されます。スポーツの種目は野球・サッカー・陸上・相撲など様々です。競技復帰はもちろんのこと、怪我予防やパフォーマン ス向上を目的にストレッチや筋力強化、フォーム指導、アドバイスなど個別に評価・指導を 行っています。
その他
当院では糸魚川市から委託を受けて、地域リハビリテーション活動支援事業への協力を行っています。包括支援センターやケアマネージャーからの要望に応じて、理学療法士・作 業療法士がご自宅を訪問します。対象者の心身の状態を評価し、在宅生活を継続するために 必要な運動指導や生活環境の工夫などの関わりを行っています。昨年度実績役 40 件となっ ています。
自動車運転再開支援について
当院リハビリ科では、脳の病気(脳梗塞など)により自動車の運転を中止している方に対して、医師の指示のもと、自動車運転再開のための評価を行っています。
評価の流れ
1.自動車運転再開について相談
当院かかりつけ医へ、自動車運転再開について相談します。
2.自動車運転再開に向けて評価依頼
医師からリハビリ科へ、自動車運転再開に向けて評価依頼をします。
3.病院にて面談・各種検査
- 面談にて本人の意向と以前の運転状況、今後の目的について聴取
- 神経心理学的検査(視覚、注意、遂行機能等の高次脳機能検査)
- 身体の動き、感覚検査など
- この段階で問題があれば以後(4〜)に移行せず、医師やご家族の方々と相談となります。
4.自動車教習所にて各種検査
- ドライビングシミュレーターによる検査
- 自動車運転の実技検査
5.診断書を運転免許センターへ送付
検査結果をもとに作成した診断書を、運転免許センターへ送付します。
6.運転免許センターで最終判断
最終的な運転可否は、運転免許センターで判断します。
- 注意事項
- 上記プログラムは必ず運転が再開できるとは限りません。あくまで安全に運転ができるか医療機関の立場で助言させて頂きます。
- 道路交通法では脳の病気など運転に支障をきたす「一定の症状を呈する病気等」 に該当する方が自動車運転を再開するには運転免許センターの許可が必要です。
訪問リハビリテーション(指定介護訪問リハビリテーション事業所)ご案内
住み慣れた糸魚川で“自分らしく”生活ができるようリハビリスタッフがお手伝いします!!
リハビリスタッフが利用者様やご家族の思いを受け止めて“出来ること、やりたいこと”を増やす為、在宅でのリハビリを行います。
訪問リハビリができること
- 基本的な動作の確認と練習(寝返り・起き上がり・座る・立ち上がりなど)
- 心理的サポート(趣味や楽しみを支援)
- 自主練習の提案と指導(筋力や体力を保つ運動指導や活動習慣づくり)
- 住宅改修や福祉用具のアドバイス(適した福祉用具を助言)
- 生活動作の確認と練習(着替え・入浴・トイレ・家事などの動作練習)
利用者様、ケアマネージャーとともに相談したケアプランに沿って、リハビリ計画を立案します。
利用者様の心身機能維持・回復と、日常生活の自立を目指したリハビリを提供します。
目標を大切に、介入時に目標期間を決めて介入させて頂きます。
ご利用状況
令和6年12月16日現在
月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
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△ | △ | ○ | × | ○ |
- ○:空きあり/△:1名/×:空きなし
- 土曜日・日曜日・祝日はお休みです
訪問日時 | 月曜日~金曜日(祝日、お盆・年末年始を除く) |
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訪問時間 | 9:00~17:00 |
ご利用方法・サービスの流れ 〜 介護保険利用の場合
ご利用にあたっては、担当ケアマネージャーもしくは当院訪問リハビリ担当者にご相談下さい。