プログラムProgram

プログラム概要

臨床研修実施責任者
病院長 山岸 文範
プログラム責任者
外科部長 澤田 成朗
副プログラム責任者
内科部長 中田 直克

①ER+専門医/地域医療プログラム

②ハイクオリティ型ER+専門医/地域医療プログラム
 ※概要はこちら

プログラム

①ER+専門医/地域医療プログラム
研修スケジュールの例

1年次

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

内科(消化器、循環器、腎臓、代謝)
28週

外科
8週

整形外科*
4週

救急
8週

2年次

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

麻酔科**
4週

小児科
8週

産婦人科
8週

地域医療
4週

精神科
8週

選択研修
16週

 :当院 :当院または他院から選択 :他院から選択

  • * 整形外科は選択することを勧めています。ERでは整形外科疾患も多く、将来の当直業務に不安を抱えなくて済みます。
  • ** 麻酔科は当院で定めた必修科目としています。気道やA-lineの確保、中心静脈カテーテル挿入といった手技が身につきます。

目的

救急を含めた一般臨床において、問診、バイタルサイン、視触診等を重視したprimary careの対応能力を身につけてもらいます。各必須科目では専門医の指導の元、各疾患の診断から治療までを経験してもらいます。

定員

4名

必修分野の協力型病院

小児科

当院、新潟大学医歯学総合病院、富山大学附属病院、新潟県立中央病院、新潟県厚生連上越総合病院、新潟県厚生連柏崎総合医療センター、新潟県立十日町病院

産婦人科

当院、新潟大学医歯学総合病院、富山大学附属病院、新潟県立中央病院、新潟県厚生連上越総合病院、新潟県厚生連柏崎総合医療センター

精神科

富山大学附属病院、新潟大学医歯学総合病院、国立病院機構さいがた医療センター、地域医療ー新潟県立柿崎病院、能生国民健康保険診療所

その他の協力病院、協力施設

新潟県厚生連佐渡総合病院、新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県厚生連けいなん総合病院、獨協医科大学病院、名瀬徳洲会病院、瀬戸内徳洲会病院、新潟県厚生連南佐渡地域医療センター、平岩診療所、小滝診療所、根知診療所、糸魚川保健所

研修医関連の院内の検討会・勉強会

  1. 毎週開催される定期プログラム

    時間 プログラム
    月曜日 毎週 7:45〜8:30 臨床推論
    毎週 16:30〜17:00 ER総合外来検討会
    火曜日 不定期 9:00〜11:00 総合診療外来研修
    不定期 16:30〜17:00 イブニングセミナー
    水曜日 第3週のみ 7:45〜8:30 臨床推論
    毎週 16:30〜17:00 ER総合外来検討会
    金曜日 第1週のみ 9:00〜11:00 Physical Lecture
    毎週 16:30〜17:00 ER総合外来検討会
  2. 研修医教育レクチャーとして不定期に開催する特別プログラム
  3. The Resident Circle “不識庵”が主催し開催する特別プログラム

研修1年目で経験できるER症例

2019年度基幹型研修医 瀬堂川 拓

瀬堂川 拓

糸魚川総合病院は糸魚川市唯一の入院病床を持つ総合病院として、市内で発生する救急患者に対して可能な限り対応するという責務を負っております。現に当院の救急応需率は安定して90%程度を保持し続けており、「断らない救急」を少ない医療資源や医療者の下で可能な範囲で実現していると考えられます。
そんな当院の初期研修では、年間を通して週1日のER・総合外来研修が義務付けられており、初期研修医はERにやってくる救急患者のFirst touchをその重症度の如何にかかわらず行っていきます。そして、毎週金曜日には各ER症例についての検討会が行われ、症例について各専門科よりFeedbackを受けるシステムとなっております。
病院としては令和1年現在、年間を通してWalk in5205例、救急車1748例を引き受けている状況にあり、研修医は概ね600~1000例/人程度を年間に担当していることから、症例を奪いあうこともなく、十分な量的担保はされていると考えられます。

ここからはその内容について、平成24年度の基幹型研修医であられる松尾先生の症例(n=774)と令和1年度に私がERで経験した症例(n=1021)を用いてより具体的に提示したいと思います。
まず背景として8年前に松尾先生が初期研修をなさられていた当時に比べ、糸魚川地域では相当な高齢化が進んでおり令和2年4月現在、高齢化率は、37.1%にもなります。それに伴って当院の患者層も高齢化してきていますが、傷病者はほぼ全例が当院にいらっしゃる状況には変化がないため、乳児から超高齢者に至るまで幅広く診察ができる状況は維持されていることがわかります。(図1)

年齢別ER経験症例(図1)

また、来院する受診患者の重症度においても、いわゆる風邪から多発外傷、急性心筋梗塞、CPAなどに至るまで幅広くカバーしており、入院加療が必要な二次救急の割合はむしろ増加していることから、以前にもまして退院までのシームレスなフォローをしやすい環境となっていることがわかります。(図2)

救急対応別ER経験症例(図2)

そしてその多様性についても厚労省に定める「研修医が経験すべき症状」のほぼすべてを網羅できる環境(表1)であることに変わりはなく、患者それぞれの状態に合わせ、科を超えた対応を行っていくことができるようになる場所であるとわかります。(図3・表1)

科別ER経験症例(図3)

厚労省が定める経験すべき症状のER経験症例(表1)

症状 2011年 2019年
発熱 73 165
腹痛 73 74
頭痛 29 58
呼吸困難 38 36
食欲不振 7 34
めまい 27 33
嘔気・嘔吐 44 32
咳・痰 29 27
下痢・便秘 17 26
胸痛 24 22
関節痛 21 21
全身倦怠感 5 17
失神 11 16
発疹 25 14
動悸 13 13
腰痛 12 12
胸やけ 2 12
四肢のしびれ 1 9
歩行障害 2 7
尿量異常 4 7
鼻出血 3 5
排尿障害(尿失禁・排尿困難) 3 5
痙攣発作 2 4
血尿 2 4
不安・抑うつ 2 4
嗄声 0 3
視力障害・視野障害 4 2
結膜充血 5 2
黄疸 0 2
聴覚障害 0 2
浮腫 1 2
嚥下困難 1 1
リンパ節腫脹 4 0
不眠 0 0
体重減少、体重増加 0 0

以上のように、当院の研修は質、量それぞれの側面から初期研修における多様な疾患に対する対応能力を育む上で適切な環境であることがわかります。また、ほぼすべての症例を当院でフォローし続けなければならないという地理的背景から他院ではまずもって不可能な「症例の前向き調査」を容易に行うことができるという特徴も兼ね備えており、疾患のその後のみならず、患者ひとりひとりを見つめ続けることができるのです。

日本はますます高齢化の一途をたどります。我々がこれまで調査、研究を続けて積み上げた医学的な根拠は役に立たなくなり、新たに「高齢者に対する」エビデンスを構築していくことが求められることもあるかと思います。そして、これからの医療者はそのような状況下でも常に患者第一に最善を追求していく必要があると思います。それが時に、命の灯が消えていくことを見守ることだとしても、です。その人の「ひととき」に目を背けることなく向かい合い続けなければならないのだと思います。私はこの1年のER実習を通して、当院ではだれ一人この心意気に欠けることなく、常に目の前の患者、社会と対峙し続けているのだと心から実感しました。

皆さんも我々と一緒に医師としての第一歩を踏み出しませんか。