社交ダンス物語 280 『キレ』を科学する

コラム

 夏です。『キレ』といえば、何を連想されますか? ビールですって? その通り! キレといえば、『包丁』もそうですね。自分の場合、地元のスーパーで、さくの状態でお魚を買ってきます。家庭用包丁で、自分で魚を切ってお刺身を作ります。うちの包丁は関孫六(せきまごろく)、日本を代表する貝印の包丁ブランドです。関孫六シリーズ内にはランクがあるそうです。競技ダンスと同じですね。ちなみに自分が使っている和包丁は『碧寿(へきじゅ)』、価格は3300円。家庭用包丁としては、切れすぎて怖いくらい。まな板まで切れそうです。(笑)なお、貝印の包丁には、プレミアムブランドがあるそうです。『旬(しゅん)』は、一流料亭の板前が使うような、1本数万円もする高級包丁だそうですよ。ダンスでいえばSA級でしょうか。

 さてお刺身、赤身と白身どちらがお好みですか? 
「刺身はダメ! ナベに投入したい!」
そう言って、悶絶する友人もいますけど。お刺身の赤と白、私はどちらも好きです。(ワインもそう)とりわけ赤身ならカンパチ、白身なら鯛が好き。奇麗に切ると、お刺身は一層美味しくなります。刺身の切り方の基本には、『平造り』と『そぎ切り』があります。手前に刃を引くようにして切る方法が『平造り』。ぶりやマグロなど、厚みのある柔らかい魚を切る時に使います。なお、『そぎ切り』は、包丁を斜めにしてそぐように切る方法です。これは鯛やヒラメなど、身の締まった白身魚を刺身にする時に使います。断面を広く薄く切ることで、独特の食感を出すのですね。

 ここで話をダンスへ。ダンススクールで『チャチャチャ』のレッスンを受けている時、コーチャー(女先生)から女子後退の際に自分が言われる言葉とは…。
「池田さん、刺身の斜め切りです!」
ダンスで刺身? 解説いたします。チャチャチャの後退ロックは、腰を斜めに使い、飛び跳ねるのではなく、手前に引くようにして下がりなさいとのこと。コーチャーいわく、そのイメージが『刺身の斜め切り』だそうですよ。チャチャチャは四分の四拍子の曲、コミカルで歯切れの良さが踊りに求められます。自分がコーチャーから言われていることですが、決して早く動きすぎず、フォー・エンド・ワンでスパッと止まって下さいね。止まっているけど、バディは動き続けています。ビールや包丁ばかりでなく、ダンスも『キレ』が肝心でした。(笑)

 最後に話を包丁へと戻します。いくら切れ味の良い包丁でも、お手入れなしで長く使っていると、別物になってしまいます。自分の格好わるいお話をします。かつてはまな板まで切れそうだった包丁で、サバの皮目に切り込みを入れようとしたら、切れません。「あれっ?」力まかせに包丁の刃を立てたら、サバは潰れてすり身へと変身。(これじゃ、煮付けになりません!)美しく、美味しいお料理を作りたければ、たまには包丁のお手入れはしましょうね。ところで家庭用の包丁は、皆さまどのくらいの期間で研ぎ直しておられますか? お手入れの目安は1-2ヶ月と推奨されているようです。ちなみに糸魚川総合病院の給食を担当していた知人いわく、「包丁は毎日研ぐもの」だそうです。良い切れ味を常に保つことは、料理がうまくなるための条件なのだとか。さすがです。糸病の料理人!(笑)

著者名 眼科 池田成子