社交ダンス物語 252 先輩からのメッセージ

コラム

 新緑が目にしみる季節です。植物の生命力を感じますね。うちのマンションのお部屋で栽培しているアボカドもそう。(第229話・第230話)その後の成長ぶりを、ご報告させていただきます。すくすく伸びてくれたは良いのですが、縦にひょろ長く、細い幹はグラグラと揺れ、立っているのがやっと。しかも陽の当たる方向へ幹は曲がるので、植木鉢をクルクルまわすのが日課でした。
「○○さん、ダンスと同じ。自力で立てていないわ。」
アボカドの立ち姿は、自分の貧相なルンバと同じです。これではあかんとポリプロピレンの荷造りひもで幹の一部を結わえて、まっすぐに立つよう強制的に引っぱり、ひものもう片方を窓ガラスにガムテープで固定しました。(発芽して15ヶ月)

「○○さん、いつになったら立てるようになるの?」 
 それから数ヶ月経過。支えなしでは、アボカドは自立できません。幹はひょろひょろで不安定。発芽して16ヶ月頃、自分の身長ぐらいの高さ(155センチ)になってからは縦の成長はゆるやかとなり、横への成長が目立つようになりました。幹の真ん中よりやや上から2カ所枝分かれして、両手を広げるかのごとく左右へと驚異的に枝は伸びてゆきます。立つことすら出来ないのに、このまま枝が横へ伸び続けたら、アボカドはどうなってしまうのでしょうか?

 支えのひもをそっと外しては、ため息が出る毎日が続きました。アボカドのバランスはますます不安定です。このまま成長し続けたら自爆してしまうか、別の植物になってしまうのではと、不安な日々が続きました。左右へと伸びている枝を切ってしまおうかしら、それともいっそ幹の先端部分を切って、縦への成長を止めてしまおうかしらと考えました。しかし、いざ剪定となると手が止まります。(植物とはいえ先輩をちょん切るなんて、とても出来ません)
「早く立てますように…」
自分のダンスと同じ、もうダメなのではと不安とあきらめに襲われながらも、アボカドの自立を祈りつつ、我が子のように見守り続けました。

 あくる日の朝、歓喜の声が上がりました。支えのひもを外したら、アボカドは自立して立っていたのです。(発芽して20ヶ月)アボカドの背丈は自分の身長を超えています。左右に長く伸びた枝の先についている大きな葉の重みを利用して、ヤジロベエのようにバランスをとっています。細いながらも『体幹』は、しっかりしてきました。窓からの陽光をあびてその姿は凛々しく、両腕(フリーアーム)を大きく広げてルンバの美しい立ち姿を披露してくれているかのよう。
『僕は立てたよ!』
アボカドは誇らしげに、笑っているかのように見えます。胸がジーンときて、目はウルウル(切らなくてよかった)。これは、お浄土からの励ましのメッセージに違いありません。○○さん、ありがとう!私もダンスで立てる日が来ることを信じます。そしてあきらめずに、続けますね。(笑)

 
☆ダンスの『立ち』は難しい。時間はかかる。でも、やれば出来る!

著者名 眼科 池田成子