自分達チビ・ハゲの楽しみの一つは、競技会のオフ・シーズンにフランス料理を堪能することです。糸魚川市・美山公園入り口に建つフレンチレストラン『アンフィートリヨン』、前号でも紹介いたしました(第169話・第218話)。今回で三度目となりますが、食のレポートをさせていただきます。取材した季節は、昨年12月末。
ディナーは予約制です。コースは3通り(3000円、5000円、7000円)。チビ・ハゲにとって年に一度の恒例行事です。今回も奮発して7000円コースにしました。お料理でお客さんを驚かせることはもちろん肝心でしょうけど、このお店のスゴいところはお料理が出る前に、「おおっ!」と驚かせてくれるんです。フレンチのムニュ(メニュー)は印刷物ではなく、ペンで書かれたマスターの直筆。しゃれていますね。年賀状と同じ、ITの時代だからこそ直筆は嬉しい。かつて和の料理の鉄人・道場六三郎が、毛筆で美しくお献立を書くシーンには感銘を受けましたが、さすがです。
アミューズ 広島産カキのパン粉焼き
パルメザン風味
前菜 自家製田舎風パテのサラダ
スープ 北海道産カボチャのスープ
魚 新潟県産真鯛とヒイカのブーリード
ソルベ りんごのソルベ
肉 信州牛トモサンカクのグリエ
エシャロット風味のソース
デセール あんぽ柿のタルトレット
チョコレートムース
はちみつのアイスクリーム
自家製パン
コーヒー 紅茶
ムニュは上記のとおりです。お店のマスターに負けてはいられません。『インスタ映え』がもてはやされる現代において、お料理がいかに美しく美味しいかを画像なしにてお伝えさせていただきます。(笑)
まずは、ビールで乾杯。一品目のアミューズ(ひとくちのお楽しみ)は『海のミルク』と称される広島産のカキを使ったお料理です。カキの表面にまぶしたパン粉はきめ細かでこんがりきつね色。ほのかにハーブの香りがします。薄いカリカリのころもを噛むと、中からジューシーな海のミルクがしゅわっと舌に広がります。カリッ・しゅわっといえば、ウイスキーボンボンのような食感。スターダストのようにお皿に散らされた粉チーズといい、五感が刺激されます。
「これ、メインでも良いよ!」
リーダー絶賛。塩加減も抜群です。食べるのがもったいないと、ダンス・ビンボーのチビ・ハゲは時間をかけてチビチビ一品目を楽しんでおります。でも、完食しないと次のお皿は出てきませんよね。(笑)
ここで、カキと相性が合うといえば、辛口白ワイン。ワインリストから自分達が直感で選んだのは、フランス・ロワール地方のサンセール・ボー・ロワ。品種はソーヴィニヨン ブラン。淡いイエロー。青林檎、グレープフルーツ、レモンやハーブなどの香り。まろやかでシャープな酸味の心地よいボディのある爽やかな辛口白です。あらっ? 白ワインのグラスなのに、ボウルはコロンと丸くてかわいい。しかも小振り。ステム(脚)を手にとって、納得いたしました。女性の手にもフィット、安定感あり。お店の優しさが伝わってまいります。
2品目の前菜は、自分達のオーダー・メニュー。昨年と同じ、自家製田舎風パテのサラダ。その美しさは筆舌に尽くしがたい芸術作品と第218話で紹介いたしました。お料理が運ばれて来た時は、リーダー・パートナーともに歓声があがりました。真っ白なお皿に、赤と緑と茶のデコラティブなアート。野菜達はまばゆく輝いて、まるで生きている宝石のよう。これは、おうちでは絶対に作れないし、食べられません。昨年度は赤の彩りにピーツが使われていましたが、今年は糸魚川産の赤だいこん『紅くるり』を使用。「食彩館」にあるとのことですが、たまに原信(第187話)の地元のコーナーにもあるそうです。パン、デリシャス! 自家製オレンジバターと北海道よつ葉バターが添えてあります。店内では、フルーツ・バターを販売しているそうですよ。
3品目は、北海道産カボチャのスープ。昨年度は、お料理に使用されたお野菜全てが『糸魚川産』でした。今年は広島産のカキといい、産地にこだわっていますね。食器およびテーブルクロスは、白で統一されています。スープの鮮やかな黄色が、目に飛び込んできます。トッピングのクルトンと白いクリームが、カボチャの甘みを引き立てています。もったいないと言って、カップに張り付いているスープをパンで拭ってリーダーは食べています。(笑)
4品目は、新潟県産真鯛とヒイカのブーリード。ここで、ブーリードとは何ぞや? プロバンス地方の魚介のスープだそうです。お店では糸魚川でとれたスナエビのだしを使ったそうです。さすが!地元の食材を最大限に引き出してくれていますね。スープは澄んだ赤茶色をしています。スナエビとは甘エビの子ども。富山県出身の筆者、『甘エビ』といえば『富山』と申し上げたい。我が家のお雑煮には、甘エビをふんだんに入れます(第143話)。糸魚川でもとれるみたいですね。お皿に敷かれたブーリード・ソースの上にイカとキャベツと真鯛が順に層をなし、最上階には長細いカリカリポテトがトッピングされています。
「ソースをパンにつけてどうぞ」と女主人。
「パン、おかわり!」とリーダー。
ヒイカは小振りなイカ。こちらも糸魚川漁港で水揚げされたもの。プリプリでやわらかです。うちの病院の給食の『軟菜食』に出してOK。ブーリードはデュグレレ(魚の骨のダシ・第169話)に比べて、さっぱりしたお味。
「今日のこの日を楽しみに生きてきた。幸せだ。」とリーダー。
「試合で勝ってそのセリフを言ってちょうだい。」とパートナー。
ここで筆者と同じ、富山県出身の女主人にたずねてみました。お店では、富山の食材を使うことがありますか?
「あります。ホタルイカ、里芋、タケノコ。」
女主人はニッコリ。ホタルイカは糸魚川が獲れる北限、でも富山のものを使うそうです。富山の方がおしなべて大きくて良品質。なお、糸魚川では砂地で獲るので、イカに砂が入ってしまうとか。
5品目が運ばれてきました。りんごのソルベ。産地を聞いたら長野県産。やはり、りんごは信州ですよね。真っ白な可愛いカップに、白いソルベがまるく盛りつけられています。取材した季節は12月、ホワイト・クリスマスに彼氏と来たら、ムード満点でしょう。(彼氏が欲しいよぉ!)知る人ぞ知る、富山でもおいしいりんごが収穫されるんですよ。富山の魚津りんご、ご存知でしたか? 甘くて歯ごたえシャキシャキ。自分達は富山へ行った帰りに購入します。北陸自動車道の有磯海SA(下り線)で販売されています。お徳用は1袋が約10個入りで500円。運が良ければ蜜りんごに出会えるかも。
富山県出身の筆者、ここでまた富山の宣伝をしてしまいました。メインディッシュ、6品目は信州牛トモサンカクのグリエ、エシャロット風味のソース。トモサンカクの解説は第218話にありますので、ご参考に。前菜と同じ、白いお皿に赤と茶と緑の小宇宙です。この3色は、お料理を美しくみせてくれますね。お肉はピカピカでジューシー、しかも分厚い! 添えてあるお野菜は、ひすい銀杏に芽キャベツ、サツマイモ。お野菜は糸魚川産とのことです。牛肉にサツマイモって意外な組み合わせと思いきや、とても合うんですね。甘いサツマイモと脂の乗ったお肉は、うま味の相乗効果あり。食欲をそそります。焼き加減といい。自宅ではこんな見事なお肉は食べられません。お料理に合ったおすすめの赤ワインを、女主人にたずねてみました。
「メニューにはないお酒がございます。」
ステキ! ワクワクしちゃいますね。(笑)メニューにはない女主人おすすめの赤ワインは、PLAISIR & DECOUVERTE(フランス語で「喜び」&「発見した」、ワクワクするものに出会ったという意味?)品種はカベルネ・ソーヴィニヨン2015年。きれいなガーネット色をしています。さて、テイスティング…。スパイシーでミントの香り。やや重くてジビエにも合いそう。後でレシートを見て、驚きの価格! お店でいただくお酒にしては、お財布に優しい。
7品目のデセール(デザート)。昨年度は雪のようなフロマージュ・ブランでした(第218話)。今年は一変して、和のテイストを取り入れています。あんぽ柿のタルトレット、チョコレートムースにはちみつのアイスクリームの三種が一枚の白いお皿に盛りつけられています。こちらも白に赤と茶と緑の世界。ミントの緑とイチゴの赤がデセールを神秘的に醸し出し、お皿の中は『小惑星』をイメージさせます。柿は、富山の福光のあんぽ柿を使用とのこと。あんぽ柿とは、渋柿を硫黄で薫蒸した干し柿とのこと。単に干しただけの干し柿との違いは、半分生のようなジューシーな感覚で柔らかいのが特徴。柿といえば佐渡も有名ですね。地元を愛する料理人、ここは新潟でありながらなぜ富山の柿を使ったのでしょうか? 女主人に聞いてみましょう。その答えとは、富山の方が早く出るからだそうですよ。なるほど、何事も『早いもの勝ち』なんですね。お勉強になりました。(笑)
チビ・ハゲ、美酒・美食に大満足。
リーダー:「成子さん、1+1は?」
パートナー:「にぃーっ!」
♪アホな女の独り言 酔ったぐらいで忘れるかっ!(笑)
糸魚川市・美山公園入り口に建つ南フランスの小さな隠れ家のような素敵なフレンチレストラン、アンフィートリヨン。今年も食のレポートをさせていただきました。昨年は競技で結果を出すことができませんでしたが、2人ともに健康でダンスが踊れたこと、そして美味しいフレンチをいただけたことに深謝いたします。
☆PLAISIR & DECOUVERTE!
(プレジール・エ・デクーヴェルト)
著者名 眼科 池田成子