月日の経つのは速いものです。アラフィフ・独身・家なし女の筆者、家主さまから立ち退きを命じられ(第166話)、同マンションの5階のお部屋に引っ越してはや3年が過ぎようとしています。(第174話)。新居は広くて眺めも良いのですが、ひとつ重大な問題を抱えております。雪国の冬というのに、お部屋に備え付けのエアコンの暖房が効かないのです。前の家主さまからは、マンションでのファンヒーターの使用は禁じられていました。結露でお部屋にカビを生やしてはいけませんとのこと。そこで不動産を通して現在の家主さまにお願いしたところ、エアコンの室外機の部品を一部交換してくださいました。(家主さま、ありがとうございます。)
ところが、修理していただいた後も、暖房は一向に効かないのです。備え付けのエアコンは作動中、冷房はブルー、暖房はオレンジのランプが点灯しますが、オレンジのランプがじきにブルーへと入れ替わっているんです。(真冬に冷房?!)
「全部交換しなきゃなぁ…」
部品交換の際に、電気屋さんがつぶやいていました。室内機もかなり年季が入っている模様。アラフィフ・独身・家なし女、住まわせていただいている身分です。家主さまの持ち物を、寒いからと勝手に取り外す訳にはゆきません。
「そのままの形で、お返し下さい。」
持ち主さまからは、出て行く時にそう言われるものですよと、電気屋さんは『賃貸』のキビシさを説いてくださいました。
7月生まれの筆者、暑さには強いですが寒さには弱いんです。ダンスの競技会もそう。シーズンに左右されます。エアコンなしの夏の大会は、選手達は扇子パタパタ。へばっているのに、自分は平ちゃらです。他方、暖房なしの冬の大会は、自分は越冬中のカメムシのごとし。動きは鈍いわ、レイノー現象で手足の指が蒼白になります。踊っている時も、足の感覚がありません。(リーダーに足を踏まれても、分からない?)スタンダードの場合は電車のつり革のごとく男子にぶら下がっていられますが、ラテンは女子も自力で立たねばならないので、涙モノです。実はレイノーは言い訳で、ダンス発達障害? 50過ぎてよちよち歩きどころか、つかまり立ちが精一杯。(涙)それにしても、中高年アマチュア競技選手のパートナーさん達は凄まじいですよ。真冬のチルド室のような体育館で、裸に近い格好で熱くサンバを踊っているんですから。(ダンスをしない人の目からは、踊る宗教?)
「年をとったら暖を。」
そう言われます。でも、お部屋は灯油禁、ガス栓なし。コートを着たままキッチンのコンロで暖をとり、ひとりお酒に手を伸ばしている自分がいます。(哀れなオバサンの代名詞?)ロシア人がお酒を好む気持ちが、よく分かりますよ。寒いからお酒を飲むんですね。ちなみに、フランス人は料理を楽しむためにお酒を飲み、日本人は酔っぱらうために酒を飲むとか。50を過ぎたら、『賃貸』の一人住まいは家主さまから疎まれると聞きます。アラフィフ・独身・家なし女の筆者、今は病院をバックに付けてここに住まわせていただいておりますが、職を離れたら立ち退かなければなりません。ババにとって賃貸住まいは、春の夜の夢のごとし。ならば自分のマンションを買えば良いと思われるでしょうけれど、身寄りのない老人がボケたら、火の取り扱いやマンションの処分はどうなるの? アラフィフの今ですら朝の出勤時にコーヒーメーカーの電源を切り忘れそうになるというのに、年とって史上空前の糸魚川大火を出したらどうしようと、老後の心配は尽きません。
それにしても、うちの病院は暖かくて快適です。18年前の冬に医師駐車場で滑って転倒し、左足を複雑骨折してうちの病院の整形外科に3ヶ月間入院していました。病院では、目覚まし時計は要りません。雪かき・掃除はしなくて良し。お部屋にお茶のサービスあり、三度の食事は出てくるわ、入院生活は『極楽』でした。退院を言い渡された時は、とてもブルーな気分になりましたよ。(もっと、ここに居たいっ!)
「池田先生、まじめに働きなさい。そしたら、『なでしこ』へ入れてあげます。」
これはかつて、当院併設・老健施設なでしこの、施設長先生から戴いたありがたきお言葉です。なでしこのデイルームは吹き抜けの広々とした空間(286平米)。しかもフローリング!音響も備わっています。そこではダンスが楽しめそう。
「身寄りのない池田の保証人には、誰がなってくれるでしょうか?」
恐る恐る聞いたところ、Y副院長(第144話)が保証人になってくれるから大丈夫とのこと。実にありがたいことです。アラフィフ・独身・家なし女、老後の心配はいりませんね。眼科の池田、今をまじめに働きます。読者の皆さま、なでしこのデイルームで、一緒にルンバを踊りましょう。糸病、バンザイ!(笑)
☆ところでその頃Y副院長は、何歳になっている?
著者名 眼科 池田成子