社交ダンス物語 236 オトナの昼ごはん

コラム

 ランチをのぞけば人生が見えてくる。働くオトナの昼ごはん。それが「サラメシ」
これはNHKで毎週放送されている番組ですよね。番組紹介によると、『働くオトナは腹が減る! 番組の主役はずばり「働く人のランチ」。サラリーマンの昼食(サラメシ)から、話題の企業の社長さん、憧れのスポーツ選手まで、多彩な職業の人々のランチを徹底的にウオッチング。この仕事だからこのランチという驚きの法則や笑いと涙のエピソードなど』なるほど、サラリーマンのお昼ごはん、お腹を満たすだけじゃない。そこには人生のドラマがあるんですね。

 ここで、うちの病院のドクター達のランチをのぞいてみましょう。約7割の先生は、市内のお弁当屋さんを利用しています。昼食の時間は、皆さんまちまちです。救急患者さまの対応や予約外患者さまのラッシュで、夕刻にランチという先生もいます。医局の掲示板には、ドクターの名簿と日付が記してある『弁当予約表』と『日替わり弁当カレンダー』が貼られています。お弁当は一食500円前後。ワンコインでおさえるのが、今やトレンド? その日、お弁当を注文したい人は予約表に○を、いらない人は×を付けます。医局の秘書さんが○の数を数えて、お弁当を注文してくれます。もちろん、豪華でヘルシーな愛妻弁当を持参してくる先生もいれば、自分で作ったお弁当を持参する女医さんもいます。ステキなのは、ダンナさんが作ってくれたというお弁当。ダンナさんもドクターです。デパ地下のお惣菜を買って来て、お弁当箱に詰めてくれたそうです。色彩良く、可愛く詰まっていました。超忙しいのに、奥さまへの愛情を感じますね。中にはコンビニで調達、カロリーメイトやトリ胸肉の塊という若い先生もいます。(ダイエット中なの?)病院の食堂から出前をとる先生もいます。ラーメンや、カツカレーが人気ありますね。当院の食堂のカレーは辛口で美味! でも、ワンコインじゃおさまらない。

 ちなみに筆者のサラメシは、自前のお弁当です。自分が通っている糸魚川のスーパーは、夜10時に閉店となります。仕事を終えて、会議があって、書類作成及び手術申し込みや投薬の指示をパソコンに入力、その後にダンスの練習をしていたら、あっという間に夜10時になってしまいます。よって買い出しは、その日の午後の外来診療(又は手術)が終了したら、病院をバッと抜け出してスーパーへと走ります。朝の10分は、自分にとって1時間に相当するくらい貴重です。よってお弁当は、朝は作りません。前日の夜遅く、もしくは午前様に作ります。お弁当はシンプル。ゆで卵とおかず1~2品のみ。作る時間と食べる時間の短縮に重点をおいています。忙しいとはいえ、冷凍食品は使いません。新鮮な食材にこだわりますので。うちの冷凍庫の中にあるのはコーヒー豆と、生ゴミ回収日まで保管している魚の骨と皮、ギンギンに凍らせたビールのグラスぐらいです。(笑)

 さてここで、自分のお昼ごはん、一言で申し上げるなら「時間との戦い」です。腕時計をチラチラ見ながら食べています。当院の眼科医は自分1人のみ。予約患者さま、ならびに初診患者さまの診察、治療に一刻を争う救急患者さまの処置を医師ひとりで行っております。午前診療が終わったら午後2時近くという日もありますが、午後の患者さまは眼科外来の前でスタンバっていらっしゃいます。なお、月曜と水曜の午後は眼科の手術日です。手術は午後1時半スタート。午前診療の終わる時刻は、通常午後1時半近く。10分でお昼ごはんと歯磨きとトイレを済ませ、手術室へ駆け込みます。労働基準法によると、休憩時間は労働8時間を越える場合は、少なくとも1時間の休憩が義務付けられているのだとか。でもお医者さんは、お巡りさんや消防士さんと同じ、『聖職』です。火事で目の前の建物が燃えているのに、「お昼の時間がやってきた!」とお弁当を広げるファイヤーファイターはいないでしょ。同様に、自分を待って下さっている患者さまがいらっしゃる限り、医師は熱く手術室へ走る次第であります。

 さて、秋の競技会シーズンです。遠征地の競技会場で、対戦相手の踊りやドレスが気になるのはもちろんのことですが、競技ダンサーの昼の『コンペ食』も気になります。皆さん何を食べているのでしょうか? コンペ食をウオッチング! 早朝から移動や準備に忙しい競技会、概ねの選手はコンビニで調達したおにぎりやパン、バナナ、速攻チャージのゼリーです。ナッツを袋から取り出して、ボリボリ食べているパートナーさんを見ました。(ステキ! 筆者もナッツ大好きです)極めて少数ですが、中には手づくりのお弁当持参のパートナーさんもいらっしゃいます。しかも別所帯のリーダーさんの分まで用意して。自分達もそうですが、ボールルームダンスの競技選手はダンス以外、指一本も触れません。男女がくっついて踊るので、競技ダンスをなさらない一般の方々には、ご理解困難かもしれませんけど。ここで筆者が申し上げたいことは、人の奥さんの手づくり弁当を合法的に食べている男の人って、どのくらいいるでしょうか? 自分は女でありますが、そんなリーダーさんが羨ましい! これぞ踊る男達の、究極の昼ごはん?(笑)

著者名 眼科 池田成子