筆者が女の子だった、太古の昔を思い出します。バブルの時代ですね。当時、若い女性達の間では、ソバージュやワンレングスといった髪型が流行りました。
「何、それ?」と、平成生まれの女の子には摩訶不思議なのでは? そう思い、うちの病院の研修医の先生に聞いてみました。すると意外にも、「うんうん、わかる!」と即答あり。(ほっ)もし、イメージできないというお若い方がいらっしゃったら、あなたのお母さんに聞いてみてください。「あの頃は良かった」と、喜んで答えてくださるでしょう。(笑)
医学生の時は髪を伸ばし、ふわふわのソバージュや、さらさらのワンレングスにして、赤や黄色、オレンジのヘア・マニキュアを入れていました。当時、麻酔科の授業で教壇に立って講義をしてくださった女の先生の髪型は、インパクトありましたね。流行に逆らって、前髪も後髪もきゅっとひとつに引きつめた、まとめ髪でしたので。その時の自分の感想を率直に申し上げますと…
「あんなに綺麗な女医さんがラッキョウ頭だなんて、もったいないわ。私のようにフワフワの髪型にしていたらステキなのに…。」
そんな自分も大学を卒業して医師となり、現場で働くうちに、かつての麻酔科の女医さんと同じ、正真正銘の『らっきょう頭』になっていたのでした。
実はこの『らっきょう頭』、手術室で働く女性にとっては、とても便利で機能的な髪型なのです。手術室では『髪の毛』は不潔です。一本たりとも外に出してはいけません。メディカル・キャップ(医療用の帽子)で完全に覆いますが、らっきょう頭の場合、スパッと帽子をかぶるだけ。帽子の中に髪の毛を押し込むといった手間も時間もかかりません。1分、1秒を争う緊急手術の場合は、身支度に助かります。なお、手術を終えたら帽子を脱ぎますが、通常は鏡とブラシは必需品です。帽子でついたぺたんこ髪やくせ毛を直さなければなりません。ダンサーと同じ、医療従事者も人に見られていますので。その点、らっきょう頭の場合、スパッと帽子を脱いでそのまま外来や病棟へ走っても大丈夫。髪の毛の手直しは、一切不要です。(笑)
でも、機能的なラッキョウ頭、長年続けると髪にそれなりの負担がかかってまいります。恐ろしいことに30代後半から、前髪の生え際が後退してまいりました。美容師さんのアドバイスで、今は前髪を下ろしたシニヨンです。嬉しいことに、医学生時代に講義して下さった麻酔科の先生と、うちの病院で一緒に働かせていただくご縁がありました。その女医先生、さすがにかつてのラッキョウ頭ではなく、毛先を遊ばせたショートヘアでした。それ故か、手術室の中だけではなく、医局でも病棟でも常時メディカル・キャップを着用していらっしゃいました。お食事中もしかり。奇妙だから、帽子はお脱ぎになった方が良いのではと思いましたが、実はこれが院内で最もスタイリッシュなファッションだったのですね。いつ手術室に駆け込んでもOK、スタンバっていらっしゃいます。数年後、自分もそうなっているでしょうか? そうそう、筆者はここ10年間、白衣の下はいつも同じ黒のダンスの練習着です。学会と冠婚葬祭以外は、ダンスの服ですよ。凄すぎですって? シニアとはいえ、ダンスは負けてはいられませんので。糸病・眼科の池田、バッと白衣を脱いだら、いつでもダンスOKです!(笑)
☆おさんぽ的、おひるね的ではもったいない。人生、スタンバイOK?(笑)
著者名 眼科 池田成子