社交ダンス物語 230 先輩を想う(後編)

コラム

「○○さん、ただいま!」
病院の講堂でダンスの練習を終えて夜遅くに帰宅すると、お部屋では青々と生命力あふれるアボカドが、自分を迎えてくれています。
「おかえり」と、植物なのにまるで笑っているかのようにも見えるんですね。不思議な感覚がいたします。

 さて、○○さんと言えば、ルンバのリードがお上手でした。とくに、アレマーナ。男の人を比べて申し訳ありませんが、同じアレマーナでもリードが全然違うのです。うちのリーダーの場合、受ける側は右腕がねじり返される感じで、不愉快になります。
「何もしないで!」
と、悲鳴をあげたくなるんですよ。他方、○○さんのアレマーナのリードは巧みで、スイスイと気持ち良く踊らせてもらえたのですから。

 ○○さんのアレマーナのテクニックを、うちのリーダーにも伝授していただきたい。是非とも教えて下さいと、ダンスのレッスンの時にコーチャーに頼みました。するとコーチャーは、首を傾げること暫し…
コーチャー:「○○さんは、何もしていないだけです。」

え”っ? 先輩は何もしていなかったの?! 社交ダンス、下手なリードなら、何もしない方が良しというのが奥義でしょうか…。


☆ダンスのリードは奥が深い! 

著者名 眼科 池田成子