社交ダンス物語 222 ドレスが消えた!?

コラム

 非常事態発生、新品同様の『ひさや』のドレスが消えてしまったのです。ひさや製といえば着心地よく、光沢も素晴らしく、ボールルームダンスのトップ・プロの先生がご愛用なさっている高品質なドレスです。(第172話)
パートナー:「クリーニングに出したまま、見つからないの。」
リーダー:「それは大変だ!信じられん。」
パートナー:「まだ1回しか、着ていないのに…」
リーダー:「成子さん、ここで間違っても、『一体どうなっているんだ!』と大声をあげたり、『責任者を出せ!』とお店に怒鳴り込んではいけないよ。ボールルームダンスを嗜む女性は『淑女』なんだ。騒ぎ立てては、ダンスのイメージを悪くしてしまう。」

 消えたドレスを巡り、2人はあれこれ推測する。
パートナー:「誤配送もあり得るわね。でも、背中がバックリ開いた社交ダンスのドレス、受け取った人は違うと、すぐに分かると思うけど…」
リーダー:「よく見ないで、そのまましまい込んだのかも…」
パートナー:「デモや競技に忙しいプロの先生なら、あり得るかもしれないわ。でも、ここは田舎よ!」
リーダー:「実は犯罪に使われているのかもしれない。池田先生使用済みのドレスだ。ニオイをかいで、誰かがハッハハッハやっている可能性もなきにしもあらず。」
パートナー:「……。それ、ボールルームダンスを嗜む『紳士』の発想なの?」

 行方不明になったという連絡を受けて数日後、救急隊もといクリーニング店から、糸魚川総合病院へ緊迫感ある第一報が入りました。
「只今、調査中です!」
第二報は、翌週早々に入るとのこと。『災難に逢う時節には災難に逢うがよく候 死ぬる時節には死ぬがよく候』これは良寛さまのお言葉です。煩悩具足の凡夫(ぼんぷ)の自分には、それってとてもムズカシイ。心中穏やかでいられません。ああ、消えたドレスの安否はいかに…。


★根本煩悩には、『三毒』があります。すなわち、『むさぼり・いかり・そねみ』 三毒を滅すれば、苦も消滅すると教えられます。凡夫とは、仏教の真理に目覚めることなく、煩悩(ぼんのう)に支配されて生きている人間のこと。

著者名 眼科 池田成子