社交ダンス物語 221 リーダーとパートナーの会話 19

コラム

 夜中の病院の講堂には、ダンスの練習に励むアラフィフ独身男女の姿あり。電気代をスポンサーである病院にもっていただいているのですから、ダンスを通して糸魚川総合病院を全国にアピールすることは、自分達チビ・ハゲの責務であります。
リーダー:「成子さんと組んで10年ダンスしているのに、僕達のラテンは全然ラテンらしくない。」
パートナー:「ラテンらしさって何?」
リーダー:「寄せて、離れる。寄って、解き放つ…」
パートナー:「コネクションね。私、ダンス発達障害なの。立つのが精一杯よ。」
2人は向かい合って手と手を合わせ、コーチャーに言われた通り、押したり引いたりの単純動作を繰り返す。(伝わってこないっ!)

パートナー:「ダンスを習う前は、映画『Shall weダンス?』の竹中さんの動きを見て、衝撃的だったわ。ありえない!人間の動きじゃないって。糸引き納豆の中でうごめいている尺取り虫のようなんだもの。」
リーダー:「僕もだよ。男がくねくねしていて、気味悪いと思った。」
 ちなみに今の自分達は、それが目標です。ダンスは脇から下が足。みぞおちを引き上げつつ、肛門に挟んだ紙を落とさぬよう粘って歩くしぐさは、ダンスをしなければ一生ご縁のない動きなのでは?

リーダー:「ラテンらしさとは、男女が一体感を出しつつも自由度は高いとある。」
パートナー:「愛のかけひきね。」
 くっついて愛を表現していた2人は、さっと離れました。離れて踊りながらも、お互いのへそが目には見えない伸び縮みするヒモでつながっていると意識。
パートナー:「NHKの朝ドラのセリフにあったわ。漫才の相手は、夫婦よりも難しいって。きっとダンスもそうなのね。」
女の子だった頃、4月に入ってもひな人形を片付けないで、眺めて楽しんでいました。タタリでしょうか? 結婚とは縁なし。時には罵声をあげ、時にはべた褒めしつつ、リーダーとの共同作業に励むパートナーでした。(涙……笑)

著者名 眼科 池田成子