社交ダンス物語 215 6秒待つ女

コラム

 近年、『キレる高齢者』が急増中だそうですね。座席を譲れと若者に向かって怒鳴ったり、スーパーやコンビニのレジで接客が悪いとばかりに店員さんを怒鳴りつけるケースなど。リストラされて、会社に放火という怖い事件もあったようです。

 そう言われれば、自分にもこんなエピソードがあります。車で走行中、赤信号で止まっていたら、後ろからズドンと追突されました。後ろの車のドライバー(高齢の男性)がコワい形相で車から降りて来て、怒鳴るんです。
「じきに信号が青に変わろうとしているのに、なぜ発進しないのか!」
その男性は、キレた末にドロン。バッグの中からすかさず口紅を取り出し、相手の車のナンバーをフロントガラスに書き付けました。その男性宅に警察から呼び出しが…。電話にはお孫さんが出た様子。おじいさんと代わるよう警察が言ったら、おじいさんは今、押し入れの中に隠れているとか。
「お前の車はポンコツだ! わしの車は新車だ!」
警察署でご対面したところ、加害者は被害者に向かって再度逆ギレ。(トホホ)

 年をとると、知らない間に前頭葉の働きが衰えて、感情が抑制できなくなるそうです。生活環境が大きく変わることも、キレる要因になるとか。また、聴力、記憶力の低下により、話がうまく理解できずキレてしまうこともあり。公の場でキレるのは、格好悪いことですよね。そこで高齢者は、怒りをどうコントロールするかが肝心となってまいります。その対策として、腹が立ったら6秒待てと言われます。この6秒という時間は、前頭葉が怒りを抑制するのに必要な時間なのだそうですよ。

 さて、この10年間、競技生活を続けてまいりましたが、ダンスの競技会場で怒鳴っているプロやジュニア・ジュブナイルの選手は見たことがありません。罵声を浴びせ激しく言い合っているカップルは、概ねアマチュアのグランドシニアの選手です。自分達は区分でいうとシニア、じきにグランドシニア(55歳以上)になります。うちのリーダーは本番に弱い。彼のパートナーを勤めていて、試合中にリーダーがとちった時には、叫びたくなるんですよ。「この、ハゲ犬!(第178話)」ってね。ああ、キレる高齢者急増中。これは、ひとごとではありません。競技会で腹が立ったら、ぐっとこらえて6秒待つ?(笑)


★成子さん、踊っている間は0.5秒待って!(音より早くならないで):リーダー談

著者名 眼科 池田成子