スポットライトを浴びて、生バンドの演奏でソロ・ダンス。それは競技ダンサーなら誰しもの夢。その権利が与えられるのは、日本武道館で開催されるインターナショナルダンス選手権大会で決勝に進出したカップルです。そのチャンスが、自分達チビ・ハゲにもやってくる?! 11月3日に糸魚川で開催される農業まつりにおいて、ホール恒例イベント『芸能大会』に、スポーツドクターのY先生(第157話)率いる当院のジャズ演奏グループが出演するので、共演して踊ってもらえないかと依頼がありました。
11月3日といえば、ダンス昇級をかけた競技会(埼玉県大会)の日。その日うちのリーダーは決勝に入るつもりでいました。昇級規定によると、その前月に開催される栃木県大会においても、準決勝以上の成績を納めなければなりません。農業まつりに自分達が共演できるかどうかのお返事は、競技会の結果次第。栃木県大会にて、うちのリーダーは見事2回負け(2次予選敗退)。よって次年度昇級への道は断たれ、地元のお祭りに参加させていただくことになりました。(涙……笑)
栄えあるソロ・ダンスとはいえ、競技会の当日に競技会場以外で踊ることは、自分達にとっては『負けダンス』。
「負けダンスだけは避けたい!」
最初はそう言っていたリーダーですが、負けて糸魚川のお祭りで踊らせてもらうことに、まんざらでもない様子。糸病のジャズ演奏グループ「糸病スウィングガールズ」とコラボ、曲はジャズの代表作「シング・シング・シング」。競技ダンサーなら、血が騒ぐ曲です。
病院4階の災害治療ホール、そこにはバンドのメンバー達の練習光景があります。忙しい病院職員の人達が、仕事以外で一致団結している姿に、うちのリーダーは心を打たれたとか。バンドの盛り上げ役として依頼された自分達、糸病のステージをダンスで粗相してはなりません。ソロ・デモは通常1年以上かけて準備されるもの、でも自分達に残された期間はわずか2週間。病院2階の講堂で、夜中に猛練習開始。
リーダー:「成子さん、競技会じゃないんだから、そんなに勝ち急いで踊ることないよ。クイックは思ったよりも、音楽はゆっくりなんだ。」
パートナー:「あ、そう。それ、本番(競技会)で実践してくれていたら、昇級できたかもね。」
講堂では、病院コンサートの時に収録された演奏をデッキから流し、実際のステージを想定して練習しました。まる1曲(約5分)をクイックステップで踊り続けたら死んでしまうので、ジルバ、そしてチャチャチャとサンバも組み合わせて(ちょっと無謀?)、お客さまを飽きさせないよう自分達なりにアレンジしました。
会場は糸魚川市民会館、かつて『NHKのど自慢』が開催されたホールです。ステージは間口18メーチル、奥行13メートル、高さ7.5メートル。リハーサルは、なんと前日の晩一回のみ(しかも会場側の都合上、20分だけ)。脇役の自分達が踊るスペースを確保してもらったら、ピアノや主役のバンドさん達は後ろへ追いやられて缶詰状態に…(ゴメンナサイ) お客さまには4方向から見られる競技会のフロアと、一方向からのみ鑑賞されるホールの舞台では踊って別世界と知り、愕然としました(すごい制約あり)。2LODで踊らざるを得ないので(横へ行ったり来たりの繰り返し)覚悟はしていたものの、予期せぬことが生じまくり。計算してピクチャーポーズを決めたつもり、でもリハーサルでは観客席にお尻を向けています。それにしても、舞台は高い! 落ちたらあの世か、うちの病院行きです。強力なスポットライトを受けて、眼科医は目つぶしをくらう!
いよいよ本番。全5曲、自分達の出番は4曲目です。緊張する瞬間。ドラムが鳴り出すと、ステージの両サイドからスキップで登場。糸病バンドの演奏はパーフェクト。自分達にはノーミスに聞こえました。でもY先生によると、いろいろとミスがあったそうです。ちなみに自分達の踊りは、たじたじでミスだらけ(競技会で場数を踏んでいるとはいえ、ステージではノービス級)。でもY先生や、当院のジャズ・シンガーの綺麗なお姉さん(元カラオケの女王)によると、ダンスのミスは分からなかったとか。(ほっ)Y先生いわく、みんな自分のミスは気になるのだそうですよ。糸病のネームが入った黄色のハッピをきて、アドリブ・ソロでサックス演奏しているY先生、超カッコイイ!歌のお姉さんも素敵。この人たち緊張するの?と思われる人でも、ステージでは緊張するらしいですよ。ダンスも本番では力が入ります。力むと拮抗筋に力が入ります。後でビデオを見たら、自分達が映っている場面がきたら目を覆いたくなりました。(涙)しかもエンディングでは、表カウントで手拍子をとっています。(バンドの皆さま、ゴメンナサイ)とにかく、バンドの威力は凄い!協力出演してくださった糸魚川吹奏楽団の方々、ありがとうございます。糸病のステージは大盛況、嬉しい限りです。(YouTubeでご覧になれます)
最後に、スポーツドクターY先生率いる、当院のジャズ演奏グループに拍手を贈ります。田舎の小さな職場の中で、よくあれだけのメンバー(13名)を集めたことには驚きです!当院では年に3回、患者さま向けの病院コンサートを開いております。糸魚川という地域を愛し、地域の病院と患者さまを愛し、そして音楽を愛する病院職員達の情熱の為せる業でしょう。プロのダンスの先生も語っておられます。生バンドでソロ・ダンス、その敷居はダンサーにとって非常に高い。アマチュアとはいえ、それを職場の仲間と実現できたなんて幸せなこと。自分達チビ・ハゲに、夢のソロ・ダンスを与えてくれた糸病バンドの仲間達に感謝。そして応援に来てくださったお客さま、本当にありがとうございました。
★『夢』はすぐには終わらない? 糸病はさらに進化をとげる!(笑)
著者名 眼科 池田成子