社交ダンス物語 209 眼科医は語る 10年後

コラム

眼科医は語る 10年後


 糖尿病って、どんな病気? そう、血糖が高くなる病気ですよね。では、血糖が高くなると、どうなるの? 高血糖が続くと血管がやられます。いきなり太い血管はやられません。まずは、細い血管からやられます。眼には細い血管が沢山あります。糖尿病の3大合併症に、網膜症と腎症と神経症があります。さらに太い血管がやられると、脳梗塞や心筋梗塞、壊疽(えそ)を起こします。糖尿病がこわい理由は、自覚症状が乏しいことです。検診で血糖が高いと言われても、病院へ行かなかったり、通院をやめてしまう人が少なくありません。そのうち怖い合併症が…。日本は世界トップ5の糖尿病大国。日本人の10人に1人が糖尿病、うち3人に1人が網膜症あり、しかも網膜症のある人の9人に1人は視力を脅かす状態であることが知られています。

 恐ろしいことに、糖尿病患者さんの半数は眼科受診をすることを知らないのが現状であり、3人に1人しか検診を受けていません。糖尿病で怖いのは、何と言っても合併症です。糖尿病網膜症があっても、初期には自覚症状がほとんどありません。
「こんなに良く見えているのに、なぜ眼科へ行かなきゃいけないんだ?」
「自分の目は自分が一番良く分かる。見えているから大丈夫。」
そう思われがち。でも自覚症状が出てからでは遅すぎ。網膜症は相当進んでいることが多いのです。しかも、元の視力に戻すことは困難です。そこで目の定期検査はとても重要となってまいります。糖尿病網膜症は、日本人の失明原因の第2位を占めます(1位は緑内障)。血糖コントロールを今きつくしておけば、10年後に差が出ることは学会でとても重要視されています。

 よって当院では年に一度、糸魚川市民の方々を対象とした糖尿病フェアを開催しています。「糖尿病と眼」について、毎年自分は講義させていただいております。自分が担当させていただく講演時間は、午後1時半から2時。ちょうどお昼ご飯を食べて、血糖が最も上がる時間帯です。(つまり、一番眠くなる時間)患者さまの居眠り防止のため、糸病眼科の池田はスライド作成に四苦八苦する次第でございます。厳格な血糖コントロールを続けていれば10年後に差が出ることをお伝えするのは、眼科医の責務です。大切な眼をお守りするために、そのことを身をもってお伝えしたい。よって患者さまに納得していただける題材として、昨年は『ダンス』を取り上げました。

 そう、モデルは地元のサークルでダンスを習い始めた頃の10年前の自分です。ダンス発達障害の筆者、当時は7センチヒールのダンスシューズを履くと、ひとりで歩くことも困難。普通の人が、「なんで?」と思うことが出来ないのです。右足と左足を交互に出せと言われても、ワルツでは右足が2回出ます。ルンバウォークの練習では、両腕をサークルの先輩達に支えてもらい震度5。その頃の、貴重なお宝映像が残っていましたので。(笑)そして高田のダンススクールに通うこと10年。10年後として対比させた画像は、京都で開催された全日本シニア10ダンス選手権(第177話)。スワロフスキーの光る石の付いた真っ赤な競技用ドレスをまとい、クイックステップでハイホーバー・スウェイを決めたシーンです(自分達では決めたつもり)。この10年間、自分は厳格な(?)ダンスの練習を続けてまいりました。幸いにも昨年の講演では居眠りしている人はゼロ、患者さまからの拍手喝采を浴びました。(ダンスもそうなら良いのですが…)長文になりましたが、眼科医からのメッセージ。糖尿病の患者さま、そして日本には5人に1人はいるといわれている糖尿病予備軍の方々へ。血糖コントロールを今きつくしておけば、10年後に差が出ることは間違いありません!(笑)


★結果はすぐには出ないけど、何事も続けていればきっと良いことがあります。10年後に笑顔あれ!

著者名 眼科 池田成子