社交ダンス物語 202 スランプ

コラム

 富山へ転勤となったリーダー君(第198話)、仕事を終えたら脇目も振らずに高速道路を飛ばして糸魚川総合病院へ直行。そう、寸分の時間も惜しんでダンスの練習をするためです。

パートナー:「Y副院長からの依頼で、2週ごとに病院エッセイ(糸病コラム)を更新しているけど、次の原稿は思いつかないわ。」
リーダー:「思いつく時は、スラスラと書けるのにね。」
パートナー:「作家は作品が書けなくなってスランプに陥った時、湯治に行ったり、旅に出たり、キケンな恋に身を投じるというけど、アタシにはそんな時間がないわ。」
リーダー:「……。」(ミラーに向かって、黙々とシャドーをしている)
パートナー:「恋どころか、毎晩あなたと踊っていると、出会いがないの。」
リーダー:「成子さん、試合(全日本シニア選手権)を目前に控えている。僕を『恋人』と思って、真面目に練習したまえ。」
パートナー:「……。ダンサーは『演じる』ことが肝心なのね。」

 深いため息をついた後、二人は目と目を合わせて満面の作り笑顔。そして愛の踊り、ルンバを踊るのでした。自分達の大好きな曲、“Thousand Years”に合わせて。競技会では負け続きで『ダンス』はスランプ、『病院エッセイ』もスランプ寸前といえる、チビ・ハゲ中年のパートナーでした。(涙)


★スランプや失敗が続いても、調子が良かった過去を振り返ってはいけない。今つまずいているのは、もっと高い場所へ行こうとしているからだ。(元サッカー日本代表・岡田監督)

著者名 眼科 池田成子