社交ダンス物語 194 アダルト

コラム

 ボールルームダンス(社交ダンス)においては、海外では子供っぽい踊りは評価されないとのこと。大人の踊りが重用視されているそうです。ところで、大人の踊りとはどんな踊りのことをいうのでしょうか。ボールルームダンスでいう『アダルト』とは、『個性』と『表現力』を意味する褒め言葉だそうです。えっ? アダルトといえば、ビデオじゃないの? それもアリかもしれませんけど…。(笑)それにしても、外国人選手の踊りには、もの凄い迫力を感じます。ご先祖さまが、農耕民族と狩猟民族の違いからでしょうか? 観戦している時はもちろんのこと動画で見ていても、まるでこちらが飲み込まれそう。

 個性と表現力を発揮するためには、当然ベーシック(ダンスの基本)ができていることが前提となります。「ルンバウォークが、一番難しい…」うちのダンススクールに所属していたラテンA級の先輩が、かつてそう呟いていたのが印象に残っています。自分の場合、ダンス歴10年ですが、歩くどころか立つこともままならず。ルンバを踊りながら、時にはリーダーにつかまり立ち。赤ちゃんは1歳を過ぎた頃から、よちよち歩きから卒業。チビ・ハゲおばさんは10年経っても、よちよち歩きのまま。ルンバで片足をあげてピクチャーポーズをとると、「おっとっと」とぐらつきます。そんな時、コーチャーから『歌舞伎』といわれます。イヨォー・オットットットと見得を切っているのかと。(涙…笑)

 思い起こせば、サークルダンスを楽しんで2年足らずで、今のリーダーにスカウトされ(第4話)、ダンススクールの門をくぐりました。
「踏歴は関係ない。練習したものが勝つ。」
右も左も分からぬ自分は、アマチュア競技選手の彼からこう言い聞かされました。今から思えば、初心者を競技のパートナーに選ぶだなんて、凄く勇気がいること。当時サークルにいた自分は、競技ダンスを観たこともありませんでした。A級がトップで、その下にクラスがあるとは聞いておりましたけれど。その時自分は、こう思ったのです。
「多分、小学校の通信簿と同じだわ。Aは良くできました。Bは普通です。Cはもっと頑張りましょう…」
そして競技の世界を知り、そのあまりもの凄まじさに愕然としたのです。リーダーとカップルを組んで4年目、絶対に無理と言われていたシニアラテンA級に昇級することができました。それにしても、プロとアマは別物。プロは凄い!
「♪オトナの階段のぼぉーるー 君はまだシンデレラさ」
そう口ずさむ筆者、今もダンス未成年。生涯『青春』を謳歌できそうです。(笑)

 ここで、筆者からのメッセージ。自分と同じ悩みをお持ちの、中高年アマチュア競技選手ならびにダンス愛好家の方々へ。「結果が出ない」「自分には才能がない」「もう年だから…」とあきらめないで下さい。「絶対になりたい」そう思わなければ、キセキは起こりません。ご自身を『シンデレラ』と信じましょう。そして、『運動会』ではなく、『アダルト』な踊りを目指しましょう。私たちは進化して、もっと美しくなれるはず。ダンスとは、いかなる化粧品にも負けない究極の美のエッセンス。コラーゲンは減っても日々の鍛錬で、今日のあなたは昨日よりも一段キレイ。目標に向かって一段ずつ、オトナの階段をのぼりましょう。そしていつの日か王子様(お姫様)と、成熟した大人の踊りをご披露されますことを!(笑)


★ダンスで『立つ』、簡単そうで難しい。

著者名 眼科 池田成子