社交ダンス物語 192 初春のごあいさつ

コラム

 新年明けまして、おめでとうございます。昨年の年の瀬に、糸魚川市の中心部は大規模火災に遭いました。発生時平均風速14m、最大瞬間風速24.2mというもの凄い強風のため飛び火し、同時多発的に火災が発生しました。地元の消防車12台が出動しましたが、消火活動が困難。長野や新潟からの援助のもと、最終的に約100台の消防車で対応。悪条件のもと、消火活動に携わってくださった消防士ならびに消防団員の方々、その他の関係機関の方々に深謝いたします。火災発生から鎮圧まで10時間半、7万5000平米が延焼するという惨事にみまわれました。この大規模火災で、重傷の方や生命を落とされた方がいなかったことが、せめてもの救いです。皆々さまの温かいご支援のもと、一刻も早い地域復興を強く願っております。

 『いのち』、『健康』、『家族』は、何よりも大切です。実は昨年11月に、自分は患者さんとして、うちの病院のお世話になりました。
「飲ん兵衛の池田、バチがあたって肝臓がやられたか?」
そう思われるかもしれませんが、違います。突然左の耳が、聞こえなくなってしまったのです。受話器から流れる音が、右耳と左耳では全く別物。その違いは、ヒキガエルの鳴き声と、うぐいすの声ぐらい。しかも両耳ともつまった感じで、自分の話し声が響いて小さな声しか出せません。選手権(第190話)の翌日に聴力検査を受けましたが、左耳は低音域が聞こえなくなっていました。至急大学病院へ入院して、ステロイドの点滴治療を勧められましたが、我が家が一番。自分は糸魚川総合病院の『嫁』と思っておりますので。耳鼻科から、飲み薬を処方してもらいました。

 問題は、その飲み薬です。お薬の袋には、1日3回毎食後と分かりやすい大きな文字で表記されています。自分の苦手なものに、パソコンと英会話と朝ご飯がありますが、朝食を食べない自分は、朝食後と指定されているお薬と、どうおつき合いしたら良いか頭を抱えてしまうのです。とりあえず朝、コーヒーを入れて、4種類のお薬をお皿の上に並べてみました(錠剤3種、顆粒1種)。現在も内服中ですが、今や『飲み薬』は自分の立派な『朝ご飯』です。それにしても自分は医師でありながら、薬をのむのが余りにも下手? 錠剤をシートから押し出そうとしたらポロリと床に落ちて冷蔵庫の下へ転がるし(拾うのに、勇気がいります)、顆粒のお薬は歯と歯の隙間に入るわ、口からこぼれて胸の谷間へ入るわ…(歯間ブラシと掃除機出動)。

 ここで、自分と同じ病気にかかり、お気の毒にも仕事が続けられなくなった方もいらっしゃるとお聞きします。自分の場合、耳閉感は残っていますが、お陰さまで聴力はほぼ回復して、幸い仕事に支障はありません。
「○○さん、大丈夫。アタシよりもお耳が良いです!」
ご高齢の患者さまの耳元でそう申し上げると、明るい笑顔を施してくださいます。田舎の目医者は病気になって学びました。目が見える、耳が聞こえる、声が出せる、手は動くし歩くこともできる、呼吸をしている… 今まであたりまえのように思っていたことは、本当に素晴らしいことだったのですね! 糸魚川の復興を願うとともに、愛する糸魚川の患者さまの健康をお守りするため、業務にまい進する所存でございます。読者のみなさま、陸の孤島こと糸魚川の災害拠点病院である糸魚川総合病院を、本年度も宜しくお願い申し上げます。


著者名 眼科 池田成子