『見られている』という意識はとても大切。踊っている時はもちろんのこと、プロのダンスの先生はダンス以外も隙がありません。うちのダンススクールのコーチャー(女先生)は、お掃除をしている時も笑顔で姿勢も抜群。床の上のゴミを拾う姿も美しく、絵になります。服装にも気を配っている様子。レッスンを受けに行くと、毎回異なる装いです。その日の服の色や柄、デザインに合わせて、髪飾りやアクセサリーを上手にコーディネートしています。ダンスはイメージと新鮮さが大切? 生徒の目を楽しませてくれていますので。
「今日のコーチャーは、どんなかわいい服を着ているのだろう…」
レッスンの前は、ワクワクいたします。
他方、アマチュア競技選手の自分は、『着たきりスズメ』。競技用ドレス以外は、いつしか服には無頓着になっておりました。通勤時の服装は、ダンスの練習着の黒いジャージ。朝はその上に白衣を着ます。夜は仕事が終われば病院の講堂へ直行。白衣をバッと脱いだら、すぐにダンスの練習が始められます。夜間に救急患者さまの診療依頼のコールがきたら、練習着の上に白衣をバッと羽織ってただちに出動!自分は着たきりスズメですが、そんなに臭くはないと思います。気に入った練習着があれば、全く同じデザインで同じ色のものを5、6着は注文します。それを順次、着回しておりますので。勤務医にとって最も貴重なものは、時間です。女の人はお買い物好きと言われますが、仕事とダンスを優先すれば、デパートへ出かけることもままなりません。ここ(糸魚川)から一番近い三越・伊勢丹まで、片道180キロはありますので。
しかし、アマチュア選手が利便性を追求していると、次のような事態が発生することもあります。学会へ行く途中のJRの電車の中でのこと、偶然にも大学生時代の同級生にバッタリ会いました。彼も眼科医。同級生の男の子(とはいっても、オジさん)が驚いて発した言葉は…。
「池ちゃん!まさかその格好で、学会に行くんじゃないでしょうね。」
会場にて、知人のドクター達はアルマーニやエルメスのスーツ姿。ちなみに自分の服装といえは… ダンスの黒いジャージ。きまりが悪いので、そこではコートを脱ぐことができず。暖房が効いた会場にて熱さと闘う羽目に…。そこは自分にとって、『学会』というよりも『がまん会』。(涙…笑)
ちょっと笑える話でしょうか? 見られているのはTVに出る人や、競技会で踊っている時だけではありません。人はみな、いつでもどこでも見られているのですね。スーパーやコンビニも、気を抜けません。店員さんやお買い物客を、『ジャッジ』とみなしましょう。そこでは競技会のフロア同様に背筋を正し、油断は禁物です。公衆トイレでも見られています。切羽詰まっていない限り、笑顔で先を譲りましょう。アルマーニやエルメスはステキ。でも田舎には、デパートも高級ブティックもありません。学会では、ジャージで良ろし。自分に自信があれば(笑)。知恵と工夫で『自分ブランド』を楽しめたら、素敵ですよね。うちのコーチャーがそう。100円ショップを上手に利用しているそうですよ。コーチャーが身につければ、100円ショップのアクセサリーが高級ブランドに見えるのですから、スゴい! ダンスとは、品格です。さあ、セルフチェック。見られています。朝のゴミ出しの時も丹田を引き上げ、襟と姿勢を正しましょう!(笑)
著者名 眼科 池田成子