社交ダンス物語 188 その時、どんな顔?

コラム

 その日のレッスンは、スロー・フォックストロット。バック・スリー・ウェーブをしている時の男の表情に、えも言えぬ色気を感じるとコーチャー(女先生)はうっとりしながら語っています。
「え? そうなの?」

 レッスンを終えて。帰宅してから、全英選手権のDVDを見直しました。スタンダードでは、前進する側にリード権があります。スローのバック・スリー・ウェーブは、男子は後退、女子は前進のステップです。そこには、パワーをかけながら前進してきた女子のリードを受けとめ、空間を全支配している王者の、余裕ありきセクシーな男子の笑顔がありました。

 レッスンの翌日、病院の講堂で昨日のおさらいをしました。
『うちのリーダーは、どんな表情をしているのだろう…』
バック・スリー・ウェーブを仕掛けながら、リーダーの顔をちら見しました。そこには伏し目で(一体どこを見ているの?)、トリのようにくちびるを尖らせた(しかも口元はピクピク動いている)奇妙なまぁるい顔があったのでした。(涙)

 ボールルームダンスでは、基本的に男子が仕掛ける側。スタンダードの種目では男子は前進、女子は後退のステップが圧倒的に多いですよね。よって、後退がどうも苦手というリーダーさん(男子)がいるのも頷けます。競技会では背中のラインが美しい男性からチェックが入ると言われますが、男子の表情も採点の1つ?(第185話) アマチュア競技選手のパートナーさん、あなたのリーダーさんは男子後退の時に、どんな表情で踊っている?

パートナー:「男の色気どころじゃないわ。もっとイイ顔をして踊ってちょうだい!」
リーダー:「だって、苦しいんだもの。」
パートナー:「うしろにひっくり返っているからでしょ!」

著者名 眼科 池田成子