ダンスでは勝てず(涙)。でも、柔道家として優秀な選手を輩出してきた(第176話)リーダーに、柔道で勝つ秘訣を問いました。リーダーいわく、『距離をとりつつ、相手の力を利用する』。格闘技では闘う相手によって距離のとり方が重要となるそうですが、彼にとって忘れられない苦い試合があるといいます。昇段審査(黒帯をとるための試験。当時は中学生、しかもその日は大事な中間テストの前日)、対戦相手は盲目の選手。柔道の競技会の場合、目と目が合ったら礼をして、審判の先生が「はじめ」と言ったら試合が始まります。でも、対戦相手は目が見えないから、目と目が合いません。あいさつもありません。こちらから組んでも、相手は不動のまま。
「え” 動かない?!」
自分の方から技をかけようとして(背負い投げ)相手と体が触れたとたん、いきなり後ろから抱きかかえられてバックドロップ。(一触即発。リーダー、そのまま気絶!)相手の選手は視覚から情報や距離感はつかめません。よって自発的な動きはなく、相手の動きから瞬時に次を予測する能力は超人的!(まるで、座頭市)
ところで、ボールルームダンスのレッスンで、コーチャーから言われます。
「互いの力を利用しなさい」
これは押す・引くといった、二人のボディ・コネクションを意味します。自分達のダンス(とくにルンバ)はバラバラで、コーチャーいわく、別々に踊っているようにしか見えないと。スタンダードもしかり、二人のコモンセンターを意識しつつ距離を保ち、互いの力を利用することで、美しくダイナミックな踊りができるのですね。その一例が、自分達の苦手なワルツのスタンディング・スピン。女子は遠心力、男子は求心力。ダンスに馴染みのない方へ、ハンマー投げでいうと、ハンマーが女子で軸が男子です。
なお、競技では当然勝たねばなりません。勝てばいいとはいえ、柔道においても、美しい姿勢で勝てたら一番。でも、どうしても負けたくないがゆえ腰を引いて逃げ切り、みっともない格好で引き分け、または優先勝ちに持ち込むこともあるそうです。そんな時、判定の際にはプラスα、表情も大切なのだそうですよ。
「苦しい顔をみせるな!」
先生や先輩から、リーダーは厳しく注意されたそうです。
「笑顔!」
必死で踊っている時、自分もコーチャーから注意されます。『競技』とは『ビジュアル』が命? 柔道とダンス、別物のようで共通するものがあったのですね。(笑)
リーダー:「成子さん、ダンスだからと無防備に、相手に触れてはならないよ。」
著者名 眼科 池田成子