社交ダンス物語 183 レッツ ダンス

コラム

 前回のエッセイ(第182話)では、チビ・ハゲ中年の自分達が定年を迎える頃、マニュアル車やダンスホールは存在しているかどうか危ぶまれると書きました。事実、かつては栄えたダンスホールは、次々と閉店しております。ところで地球上では、いまだかつてないスピードで多くの動物や植物、魚などの生物の絶滅が進行しているといわれますね。絶滅寸前、数十年後いなくなるかもしれないといえば、動物ではオランウータンやクロサイ、スマトラトラやマウンテンゴリラなどがあげられます。喜ばしいことに、それらの絶滅危惧種の中には、最近の保護活動で数を増やしているものもいるそうですよ。筆者にとって、絶滅危惧種といえるマニュアル車とダンスホール、手厚い保護活動のもと、数十年後も健全に存続してもらいたいものです。(笑)

 ところで、絶滅寸前と危ぶまれながらも現存している数少ないダンスホールの中で、自分達のお気に入りといえば、富山県砺波市にあるダンスホール『銀の花』。平日はレッスンで使用されており、第1、第3日曜はパーティーで賑わっています。生演奏が嬉しい。パーティーでは午後3時からミキシングタイムがあります。サックスのお兄さんはイケメンで、競技ダンスの現役A級選手。ミキシングになるとステージから降りて来て、お客さんと踊ってくれます。何よりも驚くことは、ダンスホールのマスターが侍らせているカウンターを彩る美女軍団。その美しさは、まさに銀の花! ミキシングタイムになると、カウンターにいた美女達はお客さんのお相手をしてくれます。ちなみに、ダンスホールのマスターは、すらりとした長身色白の美男子で、プロのダンス教師。美しいのはお店の人ばかりじゃありません。そこに集う常連客も、北陸の豪雪地帯の田舎人とは思えない粋な紳士と淑女、しかも踊りは優美でダイナミック。とにかく、美しいものを見たいという人は、『銀の花』へ!

 さて、自分は毎晩のように夢をみると書きました。(第140話) 先日はダンスにまつわるオソロしい夢をみました。祖父が筆者の大切な競技用ドレスやお気に入りのビアグラスを、ぼっとん便所(汲み取り式トイレ)の中へ次々と放り込んでいるのです。のぞき込むと、あつらえたばかりの赤のスタンダードのドレスは○○まみれ。(涙) 生前の祖父の職業はお坊さま。『物欲』を捨てよ、『執着心』を捨てよという、お浄土からのメッセージでしょうか。でも、ダンス昇級という欲望は、ちょっとやそっと捨てる訳にはゆきません。欲がなくなってしまったら、人間とは言えませんので。ちなみに、「ごんげはん(富山ではお寺の住職をそう呼ぶ)は、座っておられるだけでありがたい。」と人々から拝まれていた祖父は生前、鯛の活き造りと血のしたたる肉が大好物(おじいちゃま、バラしてしまってゴメンナサイ)。悪夢は誰かに話した方が良いと言われますので、早速うちの病院の眼科スタッフに話したら、それはウン(運)のついた良い夢ですよと笑っていました。あれは悪夢ではなく、吉夢だったのですね。(笑) 秋の大会では、『強運』の赤い競技用ドレスをまとい、昇級を決めたいものです。

 ところで、自分達はなぜこんなにも、ボールルームダンスにはまっているのでしょう。ダンスをしない人達から見たら、いささか滑稽かもしれません。その答えを自分なりに模索してまいりました。そしてたどり着いたのは、ボールルームダンスとは男と女の、究極の美の追求であったということです。
「オトコとオンナの美の追求? それどころじゃないよ。うちのカミさんの機嫌をとるのにひと苦労!」
そうお悩みのご主人へ、筆者からのメッセージ。是非、社交ダンスを習って下さい。そして、ある程度ダンスが出来るようになったら、奥様をお誘いしてあげて下さいね。いまだかつてない発見、そして新たなる挑戦が始まることでしょう。ただし、『オトコの威厳』を保ちたいという方は、間違ってもご自分よりも先に、奥様にダンスを習わせてはいけません。ダンスが上達するのに男は女の3倍、いえ5倍以上の努力を要すると言われます。男性は女性を『リード』しなければなりませんので。奥様と同時に習ったら、奥様の方がめきめきと上達されること間違いなし。
「あなた、そんなこともできないの?」
大声で叱られかねません。
「大丈夫。僕は辛抱強いし、打たれ強い!」
あら、そうでしたね。申し上げるまでもありませんでした。(笑)


★ 人生はあなたが主役。始めるのに遅すぎることはありません。ドラマチックな曲に合わせて、踊ってみませんか? 

著者名 眼科 池田成子