自分達は『カッコイイ!』そう思っていても、傍から見て『格好悪い』の代名詞といえば、その最たるものが『ダンス』なのかもしれません。
「池田さんの良いところは、体が柔らかいこと。」
筆者はコーチャーから、そう言われます。そんなサバ折りで踊っても大丈夫?腰が痛くない? そう聞かれますが、本人は平気。富山の某ダンスホールにて、そこでは55インチのスクリーンに、世界のトッププロによる競技会(UK戦など)のファイナル、セミファイナルの録画が回っております。それを横目で見ながらうんとしなり、トッププロの真似をして競技バージョンで踊ってみせました。
「自分はカッコイイに違いない…。」
レフト・ウイスクからコントラ・チェックを決めたつもり。そんな筆者を見たダンスホールの先輩からのコメントは…。
「クラゲの幽霊だ。」
ちなみに、同じく『自分はカッコイイ』と思って踊っているうちのリーダーのホールドは、『佐川急便』のロゴマークそのものとか。(赤いふんどし姿の飛脚が、荷物を担いで走っている有様)
歩くことができなければ、踊ることはできないとのこと。まずは2人で組んで歩いてみるよう先輩から言われました。何で今さら?と思いましたが、自分達は言われる通り組んで歩いてみました。前進はボディから、後退は足から… あ” 足がリーダーとぶつかりっぱなし。次は先輩が自分と組んで歩いてくれるとのこと。
「どんなに踏もうとしても、貴女に足は踏まれませんよ。」
女子は前進、男子は後退。上体のトーンを保ち、二等辺三角形(コーチャーの言うジョニーウォーカー)を意識して自分は前進しました。あれ? 足が思うように出ない! 分かっているつもり、でも体が言うことをきいてくれない。これじゃロボット同然。
「ヒールから出ていません!」
先輩のパートナーさんからの、キビシいお声が…。
女子が後退、男子は前進では、自分は足を踏まれっぱなし。(涙)
「君たちは歩くこともできないのに、踊ることなどできないよ。」
先輩から、ピシャリと言われました。おっしゃる通り、自分達は歩くこと(基本)が全く出来ていなかったのでした。(涙)先輩のパートナーさんいわく、(ダンスで)歩けるようになるのに3年かかったそうです。女子のヒールの面積は男子よりも狭いので、なおさら努力が必要とのこと。
「君たちの踊りは、10段の階段を1歩で登ろうとしているようなもの。」
ここで、『アリ』になることを勧められました。『人』ではなく『アリ』になったと想定して、10段の階段を登る光景を想像してみましょう。アリは広い平野をこつこつと、ひたすら歩き続けます。するとその先には、はるか90度にそびえ立つ崖が立ちはだかっています。その鋭く高い崖を、アリは懸命に登り続けます。やっと登り終えたら、今度はまた広い平野が見えてきます。平野の果てまで歩き続けたら、その先にはまたもや高い崖がそびえ立っているのです。
「今さらベーシック(基本)?」
見栄えの良い憧れのステップを、いかに格好良く踊って見せることに自分達は走っていました。先輩いわく、チビ・ハゲのレベル(アマチュアC級競技会)では、ノービスの足型できっちり踊って充分とのこと。急がば回れ。何事も基本に忠実であることが何よりの近道だったのですね。それって普段、コーチャーから言われていること。目先のことにとらわれて、肝心なことを自分達はおろそかにしておりました。(反省)地味な基本動作の反復練習こそが大切。ダンスのみならず、これは仕事にも徹底しなければならないこと。学問に王道なし。ダンスに王道なし。先輩、ありがとうございました!
★ダンスは奥が深い。
著者名 眼科 池田成子