自分達にとっては背水の陣、関東甲信越ブロック埼玉県大会では、スタンダードC級は三回戦負け。今年も昇級を決めることができませんでした。落ち込んでいた自分に、更なるショッキングな出来事が…。今、住んでいるマンションの所有者から、突然の立ち退き命令が下ったのです。歴代の住居者達は酔っぱらって夜中に大騒ぎし、近隣にご迷惑をかけたため追い出されたと聞いておりました。同じ酔っぱらいでも、自分は『優等生』。なのに、なぜ立ち退かなければいけなの? なぜ? 真相を明らかにするため、所有者に直訴いたしました。すると、所有者の方から次のような回答をいただきました。
「その部屋に、私が住みたいので。」
♪目を閉じて、何も見えず……(涙)
よろめきながら、マンションのお部屋へたどり着きました。『気付け薬』であるアルコールに手が伸びていました。
『私って、アラフィフ・独身・家なし女だったのね。』
三拍子揃っています。寒い…。自分が哀れで涙が溢れてまいりました。引っ越しには、お金と時間と労力を要します。これから先、どこに住んだら良いのでしょう。新潟県選手権を控えていて悩みを抱えていては、良い踊りができそうにありません。苦しい胸の内をリーダーに伝えました。するとリーダーから次のようなお返事をいただきました。
「成子さん、悩むことないよ。うちの敷地に成子さんのために小さな家を建ててあげる。そこに住んだらいい。成子さんの大好物のナッツとジャガリコとお酒を毎晩届けてあげるよ。」
うちのリーダーには「身長」と「髪の毛」はありませんが、「土地」はあったのでした(いわゆる地主さん)。持つべきは良き友と一時は歓喜いたしましたが、ここでパートナーは冷静に考えてみました。
…今年はダンス昇級を決めることができなかったけれど、次年度リーダーは昇級を決めるかもしれない。そうなると自称、『女にモテない哀れなチビ・ハゲ独身男』のリーダーは、きっとモテる男になるでしょう。なぜって? 競技ダンス界では肩書き(クラス)がモノを言います。A級選手は『神様』で、B級選手は『雲の上の人』です。髪の毛のあるなしにかかわらず、ダンスができる男性がモテますので。昇級したら、彼と結婚したいと熱望するダンス愛好家の女性が現れても、不思議ではありません。
「あなたがうちの敷地で囲っているチビ・ハゲオバさん、目障りだわ。出て行ってもらってちょうだい。」
リーダーの奥サマから、自分にまたもや立ち退き命令が下るかもしれません。
女は三界に家なし。住処の心配はいらないとリーダーは言ってくれたものの、彼の厚意に甘えない方が賢明でしょうか? 世の中、男と女の口約束ほど当てにならないものはありませんので。このご時世、女(オバさん)はひとりでもたくましく、前を向いて歩いてゆかなければならないのですね。多忙なる医療業務ならびにダンス活動に追われながらも、新たなる家探しに奮闘するチビ・ハゲ中年のパートナーでした。
★とは言ってみたものの、女の本音は結婚して生活を保証してもらいたい!筆者と結婚したい、もしくは結婚しても良いと思ってくださる男性がおられましたら、糸病の総務課まで!(笑)
著者名 眼科 池田成子