「なぜ、肌を黒くしないの?」
「白いのは、ダメです。」
プロのダンスの先生や、アマチュアラテンA級の先輩から、そのような助言をいただくことがあります。肌が白いといわれる筆者、医師という職業上、肌を黒くできないのかと問われたくらい。ボールルームダンスのラテンアメリカンの競技選手は、上級なら皆さん黒肌です。肌の白い選手を見たら、それだけでドン引きなさるジャッジの先生もいらっしゃるとか。
他方、我が国の女性週刊誌には『美白の女神』という言葉がもてはやされています。化粧品のキャッチフレーズも『美白』や『白肌』が多いですよね。白い肌に憧れる女性が、日本人には圧倒的に多いからでしょう。でもここで、リオのカーニバルの光景を想像してみましょう。ダンサー達は露出度の高いカラフルな衣装をまとい、腰をうねらせエネルギッシュに踊っています。彼女達の肌は、黒光りしています。黒、それはバイタリティあふれる色。熱く燃えるリオのカーニバルの本戦で、京の舞子さんのような『雪肌』で踊ったら『ヤワ』でミスマッチといえるでしょう。(それこそ観戦していて、ドン引きしちゃう?)そういえば、かつてエジプトを旅した時、日焼け止めを塗っていたら現地の人からこう言われました。
「なんでそんなモノ塗るんだ? 黒くなければ美しくない。」
もともと肌が黒くない日本人、黒くなりたければ次なる3通りの方法があります。
その1)屋外で、太陽光で焼く。
その2)タンニングローションで焼く。
その3)日焼けサロンで焼く。
自分は眼科医という職業上、日中は遮光カーテンがひかれた暗室もしくは窓のない暗い手術室にいます(自称、もぐら)。外は晴れているのか雨なのか、暗いのか明るいのか、昼なのか夜なのかも分かりません。眼科医は日々、太陽光から隔離・遮断された生活を送っているため、おのずと肌は白くなってゆきます。それゆえ競技会場では、「あの白い子」と形容されるくらい。
そんな筆者、かつて同教室にいたラテンA級のWご夫妻を思い出します。自分が競技を始めて間もない頃(当時はラテンD級のパートナーでした)、自分達の踊りの良い所を見つけて、励まし褒めてくれました。また、競技用ドレスの肩ひもの色まで細かく指摘してくれた親愛なる先輩です。
『勝つために、できることは全てしましょう。』
W先輩いわく、肌を黒くするのを怠ったがゆえに、ワンチェック足りなかったのではないかと後悔したくないとのこと。実はその先輩、タンニングローションのアレルギーあり。塗ったらかぶれて痒くなるそうです。痒みと戦いながら、試合の前は根性で塗るのだとか。そういえば、あるトッププロも語っていました。勝つためには、犠牲は避けられないと。先輩を見習い、自分は一度だけ顔を黒くしたことがあります。後で写真を見たら、笑ってしまいました。顔が黒くて毛が白い羊(サフォーク種)のよう。(涙)
やるなら全身!でも、オバさんが全身を焼くには、気合いと根性が要ります。根性といえば、芸能人には凄いプロ根性の方がいらっしゃいますよね。屈強な男役を演じるため40日で30キロ増量した俳優さん、白血病患者を演じるため自らの意思でスキンヘッドにした10代の女の子、チンピラ役をまっとうするために9本抜歯など。それに比べれば、オバさんが全身黒くすることぐらい、たやすいこと?
ああ、書いた以上は、やらねばならない? 秋の新潟県選手権は近し。春のラテンアメリカン選手権では、自分達のテーマは『ジャイブが踊りたい!』でした。(第151話)もし、次も出させていただけるとしたら、次回のテーマは『チビクロサンボ』。
「あの黒いチビ・ハゲは誰だ?」
観戦してくださるお客さまをはっとさせられたら、サイコーですけれど。(笑)
★言うは易く行うは難し。(涙)
著者名 眼科 池田成子