先般、前橋で開催された関東甲信越競技ダンス群馬県大会では、スタンダードC級は準決勝へ進出した。よって、次に狙うといえば決勝。しかし、小千谷市で開催された新潟県大会では、まさかの1回負け(一次予選敗退)。最後まで残るつもりでいましたので、当院の入院患者さまには、その日の回診は遅くなりますと詫びてきたというのに…。
選手控えの間にて、自分達はしばし放心状態であった。
リーダー:「成子さん、帰ろう。」
パートナー:「帰るって、どこを通って帰るの? 2次予選を踊るため、整列している選手達の中をつっきるのは目立ちすぎ!さらし者になるわ。」
リーダー:「非常口はないのか?」
一階アリーナの片隅には、二階観客席につながる小さな階段がありました。
パートナー:「(選手達と)はち合わせしないよう二階席に上がり、そこから帰る手もあるわ。」
リーダー:「笑い者になるよ。一階の真正面でスタンばっている選手達から丸見えだもの。こんな早い時間に、二階からゴロゴロころがして帰ろうとしているチビ・ハゲがいる、あれは誰だ!って。」
自分達は敗走ルートで頭を抱える。
リーダー:「ああ、どこでもドアが欲しいよ!」
いずれにしても、この会場(小千谷市総合体育館)においては、コソコソ帰ることは不可能のようである。そこで潔く、フロアサイドで整列している選手達の中をつっきるルートを選択した。これから戦おうとしている正装姿の選手達の中を、もう終わったジャージー姿のチビ・ハゲカップルがゴロゴロとキャリーバッグを転がしながら通るというシチュエーションだ。フロアでは目立たなかったチビ・ハゲだが、フロアサイドでは目立ちすぎ!(涙)
「腰、大事にな。」
同教室の先輩が、気づかって声をかけてくれました。
そう、うちのリーダーは腰を痛めていたのである。(第157話)今回の見事な敗因は、そこにあったのか?
パートナー:「試合中は腰が痛かったのね。」
リーダー:「痛くなかったよ。」
パートナー:「……。」
リーダーの運転する車で敗走し、糸魚川へと向かう。車中にて、パートナーはカバンの中からブルボンのアルフォートを取り出した。ビスケットとミルクチョコがドッキングしたお菓子、リーダーの大好物だ。準決勝、そして決勝で踊る直前に、リーダーに食べさせるつもり(馬にニンジン作戦)で用意してあった。袋から中身を取り出し、敗走しているリーダーの口に近づけました。するとリーダーは、ニンジンを与えられたお馬さんのように、あごと唇を突き出しハグハグ食べ始めました。(手まで食べられそう?)その時パートナーは、自分が『慈悲の女神』に思えたのでした。(涙……苦笑)
「先生、お早いお帰りでしたね。」
敗走して糸魚川に戻ってまいりました。哀れな自分を、患者さまは笑顔で迎えて下さいます。本当にありがたい。病院は自分にとって、癒される場所です。リーダーが早々に負けてくれたお蔭で、日曜日の午後4時すぎには入院患者さまの回診とお悩み相談(その日のお悩みは、いびきが大きくて同室の患者さまからお叱りを受けた)を無事終えることができました。
そして夕刻には病院の講堂で、悶々とダンスの練習をしました。ダンス昇級は無理? あきらめるか、踏ん張れるか…。ああ、どん底。でも、夢は持ち続けよう。続けていれば、きっと良いことがある?
★明日は天気になぁれ。
著者名 眼科 池田成子