先般開催されたJCF群馬県大会にて、自分達は一大事に遭遇する。これから試合が始まるというのに、リーダーのスタンダードのシャツがない。かつて、ラテンのパンツを入れ忘れて懲りてから、チェックリストを作り出発前に指差し確認をしていたが(第103話)、今回はそれをもスルーしてしまった。
競技会場では、当日会場でダンスグッズを販売するお店が入っていることがある。最悪の場合、靴やドレスを忘れても、お店の商品を購入して試合に間に合わせることも可能である。でも、泣きっ面にハチ。今回の競技会は、出店なし。
パートナー:「出場取りやめにするか、裸に蝶ネクタイ締めて踊るしかないわ。」
リーダー:「それじゃ、出場停止処分を受けるよ。(涙)」
選手控え室にて。溺れる者は藁をも掴む。隣にシートを並べて待機している男性選手に頭を下げる。
リーダー:「すみません。スタンダードのシャツの予備をお持ちでしょうか? お持ちなら、お借りしたいのですが…。」
男性選手:「あります。私のサイズはSです。あなたに着られるでしょうか?」
リーダー:「着ますっ! ありがとうございます!」
自分達には、その選手は『神様』に見えた。歓喜と安堵で、リーダーはまるで天に昇るかのような恍惚とした表情だ。フリーサイズはきついので、ダンスの服は特注しているリーダーである。果たして、そのシャツ着られるの?
『ダンスの神様』は、彼に手を差し伸べた! その方のシャツはSサイズとはいえ、高品質伸縮素材。首のカフスは締まらないものの、ずんぐり体型のリーダーの腕と胴体はスルーした!(笑)。カフスの締まらない首まわりは、カラー(付け襟)と蝶ネクタイでごまかす。至近距離で見たら変。でも遠目なら、許容範囲か?
リーダー:「ああ、これで踊れる! 成子さん、踊れる喜びをかみしめて、僕は踊るよ!」
パートナー:「勝つために踊るんじゃなかったの? 踊れるだけ、幸せね。(笑)」
今回の試合では、勝つことに執着なし。踊らせてもらえることに感謝。お借りしたシャツはクリーニングしてお返ししたいので、送り先を教えて下さいと言ったら、困った時はお互い様、終わったらここに置いて下さいとおっしゃいました。感謝の気持ちでいっぱいのリーダーに、次なる心配事が…。
リーダー:「あのリーダーさん、僕たちより先に負けたらどうしよう。僕たちが終わるまで、待たせることになるよ。」
自分たちは無事、準決勝を踊り終えることができた。その後、お言葉に甘えて汗だくになったシャツをお返しする。彼らは見事、決勝進出を決めた様子。最後まで応援したい気持ちでいっぱいだったが、明日は手術日。しかも帰りは片道4時間以上かかるので、先に失礼させていただく。
通常なら、言葉を交わすこともなし。忘れ物をしたことで、お隣の選手とご縁をいただき、踊れる喜びを改めて実感させていただいたJCF群馬県大会でした。
☆自分たちより先に負けたらどうしよう…それは『杞憂』でした。競技結果をネットで見たら、そのリーダーさん、殆どのジャッジが一位をつけた余裕の完全優勝! 埼玉のO選手、ありがとうございます。
著者名 眼科 池田成子