チビ・ハゲの自分達には、『探し人』がいます。名前も知らなければ、年齢も職業も、どこに住んでいるのかも分かりません。その人は、かつて自分達が通っていた富山のダンスホールの常連客のひとり。ダンスホールが突如閉店してから(第90話)、そのお兄さんと会う機会がなくなってしまいました。
お兄さんに関して自分達が知り得ている情報といえば、元A級競技選手。腰を傷めてから、競技を引退したこと。長身細身でイケメン。メガネをかけている。髪の毛は豊富。(ハゲの自分達にとって、これは重大な関心事です)
「君たちは競技選手なら、この映画を見て参考にしたらいい。」
そう言ってそのお兄さんは、DVDを貸してくれました。次に会った時に返してくれたらいいと言ってくれましたが、お兄さんにはいつ再会できるのでしょうか…。
お兄さんからお借りしているDVDは、『ダンサーの純情』という韓国映画。韓国では『ダンサー』イコール『純情』と、思われていないのでしょうか? わざわざタイトルに『純情』と、つけるくらいですから。そういえば、池田医師が社交ダンスをしているとお知りになった、患者さまの反応は…
「まあ、いやらしい!」
昔はジルバとマンボをかじったくらいで、女遊びができた時代もあったとか。でも、今は平成。うちのリーダーに言わせると、ナンパ目的でダンスをするほど、男にとって非効率で金と時間と労力を要するものはないそうです。
さて、『ダンサーの純情』という映画の中で、筆者の印象に残ったセリフは、
「マ先生のせいでない、金が悪いのさ。」
これは、主人公が苦労して育てあげたパートナーを、横取りしたライバルのセリフです。
韓国チャンピオンの座を狙うために、とあるダンススクール経営のマ先生は、韓国最大のダンストレーナーである後輩と中国の娘を組ませます。正規のルートでは呼べないので、後輩に彼女と偽造結婚することを指図します。やがて二人は信頼し合い、愛し合う仲に。でも、彼女に目をつけた韓国ダンス協会会長の息子(ライバル)に、大会を目前にして彼女は連れ去られます。しかも、ライバルのパートナーとして。怒った後輩に向かって、マ先生いわく、
「金で買った女を、金で売ってどこが悪い?」
映画で強調されていたように、大事なのは相手を信じること。でも勝つためには、お金がかかるのも現実。レッスン料、ドレス代、競技会出場料に遠征費、ダンススクールに通うための交通費、年々増えるふりかけ代(第103話)… いつしか自分達は、『ダンス貧乏』へ。リーダーはビールから発泡酒、そして第3のビールへと拍車がかかり、パートナーはおやつ代捻出のため、赤い財布を握りしめ我先に院内を走るっ! うちの病院の売店は午後5時を過ぎると、賞味期限が本日限りのパンが半額となります。
話が脱線してしまいました。お兄さんが勧めてくれた韓国映画は波瀾万丈ですが、最後はハッピーエンド。別のリーダー(パートナー)と組めば成績が上がるのではと懐疑心を抱きつつも、今日までパートナーシップを築いてきた自分達に、感動と希望を与えてくれました。お借りしたものはお返ししたいので、お兄さんが現れそうな場所(富山近郊のダンスホールや、ダンスパーティー会場)にここ2年ばかり、自分達は出没してまいりました。でも、お兄さんには未だお会いできません。
お兄さん、私たちチビ・ハゲは、お兄さんを探しています。もし糸病コラム『ダンス物語』を読んで下さっているならば、ご連絡下さい。お願い致します!
著者名 眼科 池田成子