社交ダンス物語 125 大先輩から学ぶ ‐挑戦し続ける‐

コラム

 筆者の尊敬する大先輩であり、プロのダンス教師としてもご活躍しておられるK先生(第29話)の出版記念祝賀会のご案内をいただいた。嬉しくも、筆者にお祝いの言葉を述べさせていただけるとのこと。さあ、祝賀会は何を着て出席しよう…。
 
 競技ダンスにおいては、自分を見てくれる観客やジャッジを「はっ」とさせることが肝心。はっとさせる踊りができれば一番。それがムリでも、周りをはっとさせる衣装のポイントは高い。服装は場を盛り上げるばかりでなく、相手に対する敬意を示すとも言われる。祝賀会に出席なさる方々は、官公庁・教育・文化・地域関係・新老人の会など、様々な分野でご活躍であり、ほとんどが60歳以上と聞いている。(まるでダンス界のよう) 場を盛り上げ、皆さまをはっとさせる装いといえば…。そう、アレだ!(笑)

 『四十娘』の筆者、(じき『五十娘』になろうとしている)三十路のお祝いに祖母が新調してくれた水色の振り袖に黄金色の帯を締めて、祝賀会に参上。芸能人や演歌歌手ではないのに、この年で大胆か? このたび八十歳を迎えられたK先生は、新時代の先端をゆく新人類と呼べる方。おめでたい席では、粋な演出も肝心。

 4月6日、ハレの日。祝賀会は120名の方々が、K先生を応援するためにお集りになった。八十歳のお誕生日を迎えられたK先生には、「はっ」とさせられた。黒光りのタキシードに、桜色のポケットチーフ。年齢を感じさせない。ご自分の娘ほど年が離れている女性に、「ステキ!」と思わせるなんで、本当に凄い。さすが、プロのダンス教師の為せる業だ。

 学長、教育長に次いで、筆者にお祝いの言葉の順番がきた。自分の名前が紹介され、いざ起立。そして、正面へ向かって歩き出す。何事もダンスに結びつける筆者、ここも競技会場と同じ。ジャッジ(ご来賓の方々)は踊る前(話す前)から、つまり入場のシーン(座席から立ち上がる瞬間)から、選手(糸病・眼科の池田)をチェックしているのだ。
『自分は見られている!』 
背筋をすっと伸ばし、目線は上、そして笑顔を意識。競技会のフロアへ入場するかのごとく、颯爽と歩く筈であった。が、予想外の展開へと…。足が思うように前へ出ず。重いっ! 振り袖は鎧のごとし。ダンスでは前進は胸から、後退は足からと指導される。慣れない足袋に草履をはいたまま胸から前進しようとしたところ、帯とかんざしの重さでつんのめり、顔から転びそうになった。(苦笑)

 転倒することなく、事なきを得た。(ほっ)祝宴ではご来賓の方々から、なぜか筆者は年齢を問われる。女の子は別として、婦人に面と向かって年齢を聞くことは、デリカシーに欠けること。でも、殿方から自分の年に関心を持っていただけるということは、見た目においてはストライク・ゾーンにあるということか? 何事もプラス思考。じき『五十娘』の筆者、『お見合い相手』を紹介してもらえるのではないかと、わくわく期待する。(笑)

 祝賀会は、打ち上げ花火が上がるがごとく盛大であった。K先生をはじめご来賓の方々はパワフル。大先輩から知恵と勇気、そして元気をいただく。会場には、日野原重明先生からの生花が届けられていた。新老人、日野原先生101歳の金言は、『人間はみんな、運命をデザインできる』人生のモデルとなる大先輩がいてくださることは、ありがたい。前向きに生きることの素晴らしさを学ばせていただいた一日でした。

「お嬢さんかと思っていました。」
帰り際に、あるご婦人からお声がかかる。(ガッツポーズ!)
『あぁ、しんどい。早く定年退職来ないかなぁ。ところで年金もらえるの?』
ではなくて、
『今が青春!』
そう自分に呼びかけて、仕事とダンスにチャレンジします!


☆糸病コラムの読者の方からも、応援メッセージをいただきました。競技選手のT様(浜松市)、ありがとうございます。私も応援しております。

著者名 眼科 池田成子