社交ダンス物語 123 茶道の心得から学ぶ  ーダンス篇ー

コラム

 筆者が通うダンス教室の掲示板には、競技会の案内や日程表、登録選手一覧表と並んで、社交ダンスに関連する新聞記事の切り抜きが貼られている。その見出しのひとつに、『一曲の恋人』があった。

 『一曲の恋人』、それを言い換えると『一期一会』と呼べるもの? 一期一会は、茶道に由来することわざだ。あなたとこうして出会っているこの時間は、二度と巡って来ないたった一度きりのもの。だから、この一瞬を大切に思い、今出来る最高のおもてなしをしましょうという千利休の茶道の心得である。『茶道』と『ダンス』とでは、『静』と『動』。別次元のように思えたが、おもてなしの心を大切にする茶道の心得と社交ダンスは、相通じるものがあるようだ。

 ちなみに、うちのダンス教室は競技選手(選手会)により、一般のお客さまをおもてなしするパーティーを年に2回開いている。普段はジャージにくたびれたTシャツで練習している自分達だが、この日ばかりはお洒落をする。リーダーは、頭におとなのふりかけ(第103話)を、パートナーは舞うと裾がブルンと広がるチャコット製のドレスを纏う。選手会主催のパーティーにおいて、選手同士で踊ることは固く禁じられている。うちのリーダーは、ダンスパーティーで一曲(3分)という時間を共有してくださるお客さまを『僕の恋人』と思い、心を込めて踊るという。

 さて、毎晩のように自分達は、病院の講堂でダンスの練習をしている。相手はお客さまでない。正真正銘の恋人でもない。「アイ・コンタクトがない!」「その手、邪魔!」と、踊りながら顔をしかめている自分がいる。時には踊っていて、「頭に来る!」と叫びたくなる。競技の経験がある方なら、少なからず共感していただけるでしょうか。そこで、日々の練習において、茶道の心得を取り入れてみることにしました。
… 当たり前のように踊っているこの時間は、二度と巡って来ないかもしれない。今日が、二人のラストダンスになるかもしれない。だから、この一瞬を大切に思い、リーダーと今出来る最高の踊りをしましょう … 


☆一期一会、ステキな言葉ですね。今宵も病院の講堂で、熱く踊れそう!(笑)。

著者名 眼科 池田成子