社交ダンス物語 122 20年後

コラム

「ダンスのいろはが解った時、自分は年をとっていた…」
これはコーチャーの言葉の中で、筆者の印象に残るものの一つ。
『美』と『技』を競い合う競技ダンスにおいて、若さはとても強力な武器。しかし、悲しいかな。ボールルームダンスの技術向上のためには、相当な歳月を要してしまう。
「アマチュアは長く細くダンスが楽しめるから、いいわね。」
プロの競技選手として現役を退いたコーチャーは、笑顔でそう語る。

 筆者は、コーチャーの現役時代を知らない。リーダーに連れられてダンススクールの門をくぐった時は、コーチャーは既に引退していた。幸運にも、コーチャーが現役だった20年前のビデオを見ることができた。20年前は今よりもうんと若いから、当時の方が格段に綺麗で当然と思った。だが、ビデオは想定外であった。確かに、画面に映っているコーチャーは若い。身体も引き締まっていて、顔や肌にも張りがある。にもかかわらず、筆者には今のコーチャーの方がより美しく、踊りも素敵に見えるのだ。

 肉体美、力強さ、キレやスピードは、若い頃にはかなわない。これはエイジングによるもの。だが、年を積み重ねることで、若い頃にはない美しさが備わっている。それは、磨き研ぎ澄まされた、大人の男女の『品格』と呼ぶに相応しいものだろう。

「年をとっても、あのカップルのように踊りたい…」
そう魅了させてくれるのが、ボールルームダンス。20年後、元気で生きていられたら、チビ・ハゲの自分達はどんな踊りをしているでしょう…。

著者名 眼科 池田成子