社交ダンス物語 110 戦国武将から学ぶ -ダンス篇-

コラム

 2013年の夏は猛暑であった。夏やせしたという方も、いらっしゃるだろう。一方筆者においては、夏やせとは縁がなし。夏になると、酒も食も良く進む。節電のためサウナのような病院の講堂で、毎晩のようにダンスの練習をしてきたが、大量の汗を流した後のビールは格別に美味しい。競技選手たるもの節制が必要とリーダーからたしなめられつつも、ナッツとじゃがりこをつまみに、毎晩ビールを飲み放題。気がつくと、恐ろしいことになっていたのである。

 次に開催予定の競技会は、リーダー・パートナー共に白のラテンドレスと決めていた。競技を始めて間もない頃に、前・新潟県ラテンチャンピオンのプロの先生から譲り受けた、リオのカーニバルのような露出度の高いドレスだ。最後に着たのは、昨年の全日本シニア選手権。1年ぶりに着てみると、なんと目が三角! 

パートナー:「次のラテンの試合、白のドレスはやめましょう。まるで、ボンレスハムだわ。」
リーダー:「白を着ると決めていたのに…。」
パートナー:「あれを着て人前で踊ったら、『公害』だわ。それにダンスライフ(プロのカメラマンによる写真撮影)が来ていたら、ネットで公開されることになるのよ。おなかが目立たない、フリンジの付いた赤のドレスにしましょう。」
リーダー:「成子さん、自分への戒めだ。白でゆこう。」

 それからリーダーは、徳川家康の肖像画『しかみ像』について、パートナーに語る。家康は三方ケ原の合戦で武田信玄に散々打ちのめされて、脱糞しながら敗走した。今の情けない自分の姿を決して忘れまいと、負け戦の後に従軍していた絵師に描かせたのが、その肖像画という。そして生涯この絵を傍に置いて、自分を戒めたのだそうだ。

 自分への戒めとはいえ、ぶよぶよした情けない自分のお腹を人前にさらすのは、勘弁してもらいたい。そう主張するも、
「ダンサーとは、人にからだを見せてなんぼ、見られてなんぼだ。」
リーダーからそう言われたら、パートナーとして反論する余地なし。(涙)

 試合当日、観念して白のラテンドレスを着用する。隣にいるリーダーをふと見た時、パートナーはおぞましき光景を目の当たりにした。そこには久しく着ることがなかった男性用の白のラテンドレスに両腕を通したものの、二の腕が入らず。ペンギン状態で、もがいているリーダーの姿があった。

 いざ出陣!という時の一大事。ここに絵師はおらずとも、その姿をデジカメに収めたら、これってりっぱな現代の『しかみ像』?!(笑)


☆パートナーから一言:お互い節制しましょう。

著者名 眼科 池田成子