社交ダンス物語 109 怪我の功名

コラム

 ダンス歴6年。踊っている時は、震度5弱。ぐらついて、物につかまりたくなる。とくに苦手は、ルンバウォークとスピン。
「成子さん、6年間もダンスしてきて、なぜぐらつくの?」
リーダーは、首をかしげている。
「いつかうまくなってみせるわ、いつか…。」
自分にそう言い聞かせ、ぐらつくたびにぐっと踏ん張る。しかし、いつになっても、一向にうまくならない。
「ダンスのいろはが解った時、自分は年をとっていた。」
プロの競技選手として現役を引退したコーチャーは、そう言っている。ダンスとは、本来そういうものなのか…(涙)。

 ある日のこと。左足に痛みを感じた。足の裏に、巨大な『魚の目』ができていた。いわゆる『ダンスたこ』。現在スピール膏で、治療に奮闘中。「魚の目の芯の取り方として一番有効な方法は、靴を変える」ネットで検索したら、そうあった。競技ダンスを続ける以上、7センチヒールを履かない訳にはゆかない。スピール膏を貼っても、治る気配なし。同じく魚の目をわずらい、皮膚科でレーザー治療を受けたという同教室の先輩も、未だ完治せず。主治医から、『職業病』と言われたそうだ。魚の目もダンス同様、治るのに相当な時間とお金が必要なのか…。
 
 太古の昔から、足の裏は人体の中でも重要な部分とされてきた。そのわずかな面積で、全体重を支えている。ハイヒールを履くなら、なおさらのこと。痛みのため、踊るどころか立つことすらままならなくなった。魚の目の芯の中心は、足の裏の第4趾と5趾の中間あたり。痛いので、踏ん張ることをやめた。そして痛くない第1趾(親指)側の足裏をたよりに、無駄な抵抗はせず膝を屈伸させ、ソロリソロリと踊ってみた。すると、新発見! 今まであんなにぐらついていたルンバのオープンヒップツイストが、さほどぐらつかない。おのずと『内もも、内かかと』を意識した踊りになっていたようである。

 ダンス歴6年。魚の目は筆者がこの6年間、ガニ股で踊り続けてきた産物であった。ちなみにラテンは、身体をしぼって踊ることが命。
「景色まる見え!」
 ルンバを踊っていて、殿方からそう言われたことも、あったっけ(笑)。


☆景色まる見えとは、股間を通して向こうの景色が見えること。

著者名 眼科 池田成子