社交ダンス物語 108 風のいたずら

コラム

 お中元のシーズン、うちのマンションにも、宅急便の配達が来る。ある日のこと、自宅のインターホンが鳴り、監視モニターに映された画像には、宅急便のお兄さんがいつもの笑顔で映っていた。それでマンションの、共同玄関のドアロックを解除した。
 
 間もなく、部屋のインターホンが鳴る。宅急便のお兄さんが、エレベーターを昇ってやって来たのだ。「はぁ~い」と可愛くお返事をして、リビングルームのドアを閉める。それから玄関へと向かい、自宅マンションの玄関のドアを開けた。

 その時である。閉めたはずのリビングのドアが、ふわりと開いた。玄関先で立っている宅急便のお兄さんは、真正面のリビングルームを目の当たりにする。お兄さん、フリーズ状態。そう、独身女性のマンションの部屋には、彼にとってありえない光景があったのだ。

 さすが、宅配の百戦錬磨。お兄さんはすぐ笑顔に戻ると、お中元の品を届け一礼して、さわやかに去っていった。

 さて、リビングには……。ベランダから入る風を受けて、汗でぐっしょりの燕尾服、スタンダードの競技用ドレス、そしてスパンコールや光る石をふんだんにあしらった男女ペアの競技用ラテンドレスが、ぞろり吊るされていた。

「カビを生やしちゃいけないから、成子さん預かって。」 
 
 リーダーからそう頼まれ、自分達の戦闘服のメンテナンスをしていた時の出来事である。


☆ 自分達はマヒしているが、自宅にある競技用ドレスを人が見たら、この人『オタク』それとも『チンドン屋』? そう思われて仕方ないかも…。(苦笑)

著者名 眼科 池田成子