学会と競技会と救急患者さまの診療依頼がない限り、水曜の夜と土曜は、高田のダンススクールでダンスのレッスンを受けている。その日は、次に開催予定である関東甲信越競技ダンス新潟県大会の、競技種目であるタンゴとクイックステップの指導を受けた。リーダーがコーチャーから、早々と注意を受けている。
「目が死んでいます!」
ダンスは二人が組んで踊るもの。互いに見つめ合って踊るラテン種目と異なり、ワルツやタンゴ、クイックステップといったスタンダード種目は、踊っている時は相手の顔が見えない。腰から下はくっついているが、トップは花が開くように捻れて、男女の顔は180度離れる。よって、相手がどんな顔をして踊ってくれているのか、分からないのだ。うちのリーダーはパートナー(筆者)と踊る時、閉店まぎわのスーパーで売られている、おさかなのような目をしていたのか…。(涙)
「目に炎! 巨人の星です!」
レッスン中、懸命に踊るリーダーに向かって、またもやコーチャーの声が飛ぶ。目に炎といえば、子供の頃にみたテレビ・アニメ『巨人の星』で、主人公の星飛雄馬がライバルと対決する際に、瞳の奥が炎でメラメラと燃えているシーンを思い出す。
『♪思いこんだら 試練の道を 行くが男の ど根性 真っ赤に燃える 王者のしるし 巨人の星をつかむまで 血の汗流せ 涙をふくな 行け行け飛雄馬 どんと行け』
『巨人の星』の主題歌にジーンときて、うんうんとうなずいている自分達(しかも歌詞は全部覚えている)は、正真正銘のオジサン・オバサン世代? 年代を感じてしまう。(苦笑)
「笑顔!」
今度はパートナーが、コーチャーから指摘される。どうやら筆者は踊る時、怖い顔をしているらしい。笑顔も採点のひとつと言われるが、リーダーと組んであえぎながらのダンスは、格闘技? 笑えと言われても、顔をつくれない。ダンベルを振り上げて、走りながら笑う訓練なんぞが必要か?
その日、夜中のレッスンを終えて。
リーダー:「成子さん、次の試合は顔だよ!」
パートナー:「お面かぶって踊る?」
リーダー:「ミルコ(前・世界チャンピオン)のお面?」
そう言って、リーダーは嬉しそうな顔をしている。
『極楽とんぼ』の、リーダーである。(笑)
著者名 眼科 池田成子