社交ダンス物語 100 無いものねだり

コラム

 容姿端麗、結婚してお金に不足していない知人が、ため息をつく。彼女はお子さんに恵まれ、おしゃれな外車に乗り、家族と海外旅行を楽しむ暮らしをしている。他方、アリのように働く40代独身の筆者からすれば、同じ女性として羨ましい限り。彼女は女の幸せを全て手に入れたかのように思われる。なのに何故、彼女はため息をつくのか? その訳を聞いた。すると、次のような答えが返ってきた。

「セレブのような生活がしてみたい…。無いものねだり、なんですね。」

 さて、無いものといえば…。自分に無いものは、山ほどある(苦笑)。ボールルームダンスの競技選手として真っ先に無いものをあげると、「身長」と「髪の毛」だ。美と技を競い合う競技会において、リーダー・パートナー共にチビでハゲていることは、致命的なことか? 無いものをどんなにねだったところで、身長は伸びないし、髪の毛も生えてこない(涙)。コンプレックスを技でカバーせよと言われるが、肝心な「技」もない。

 そんなうちのリーダーも、よそのパートナーを見て、ため息をついている。

リーダー:「あんなにきれいなパートナーさんと組んでいるのに、あのリーダーはどうして勝てないのだろう。僕なら彼女のためにうんと頑張って、昇級しているのになぁ…」
パートナー:「あなたも私も、下腹が出てきたチビ・ハゲ中年よ。お互い『身の丈』に合ったカップルと思わない?」
リーダー:「……。それも、そうですね。」(苦笑)

 嗚呼、無いものねだりのチビ・ハゲカップルである。でも、ダンスができることは、本当にありがたい。感謝!(笑)



☆パートナーの願い:ダンスが上手に踊れる魔法の靴と、シンデレラのドレスが欲しいな。しかも、王子様付きで!(笑)

著者名 眼科 池田成子