社交ダンス物語 94 新潟県シニア選手権

コラム

 昨年度にひき続き、後期新潟県スポーツダンス選手権大会が長岡市みしま体育館で開催された。ラテンアメリカンの試合で上位に残ることは、年輩の選手にとっては至難の業。圧倒的に若者優位だ。予想通りラテン選手権の出場者には、中高年の姿は見られず。選手達は新潟大学ダンス部の学連。その日は寒波にみまわれた。
 
 若者って、寒くないのか? 試合会場の隅で、ハタチ前後の選手達がおヘソまる出し、太ももまる出し衣装(競技用ラテンドレス)で、試合直前の練習確認をしていた。一方、同大会ラテン・シニアの部(出場資格が35歳以上)に出場する筆者といえば… 指先がかじかみ、寒くて着替える根性はなし。(苦笑)ダウンコートにマフラー、しかも腰にはホッカイロという完全武装で、体育館のパネルヒーターの壁に貼り付いている始末である。

リーダー:「成子さん、早く着替えなきゃ。じきに試合が始まるよ。」
パートナー:「寒いわ。オバサンは若い子と違って、寒がりなの。」

 どうやら体育館の暖房が効いてきたようだ。 今度はオバサン、『暑い、暑い』と言いながら服を脱ぎ、横から見たらほぼ全裸の競技用ラテンドレスへと変身する。

リーダー:「成子さん、寒いんじゃなかったの?」
パートナー:「オバサンは更年期だから、暑いの。」
リーダー:「……。」

 毎年、本大会の決勝で踊らせてもらうことが、自分達の夢であった。だが、今回は予選を闘わずしてそれが実現。というのは、ふたを開けて知ったのだが、その日のシニアラテン選手権は格上の選手達が欠場して、出場組数はわずか3組のみ。

 決勝戦にて。フロアサイドには、若い選手達が並んでいる。その列の後ろに、シニアの部に出場する自分達は並んだ。さすが、若い子はオバサン(筆者)とは違う。贅肉なし。ウエストからヒップにかけては、ため息が出るような見事なマーメイドライン、しかも彼女達の髪と肌はピカピカ輝いている。衣装ではなく、ダンスで鍛え上げられた身体そのものが、宝石のよう。オバサンは、若い選手達をまぢかに、彼女達をほれぼれと見とれていた。すると隣にいるリーダーが、耳元でささやく。

リーダー:「成子さん、ルックスは新大生(新潟大学の学生)と変わらないよ。」
パートナー:「あら、そぉ?」

 美人妻でも夫を振り返らせるほど難しいものはないと言われるのに、若い子達を目前にしながらリーダーに褒めてもらい(のせられて)、有頂天となるパートナー(笑)。そして決勝では、なりふり構わず腰を振り、競技種目のサンバとチャチャチャを踊る・踊る・踊るっ!(笑)

 今回のラテン選手権シニアの部においては、自分達に関しては踊っただけで銅メダル。表彰式を終えて、優勝したカップルにコーチャーと思われる先生が、お褒めの言葉をかけておられた。

コーチャー:「優勝おめでとう。」
優勝した選手:「3組しか、いないんですけど。」
コーチャー:「優勝は、優勝だ。」

 お世辞返しに、パートナーがリーダー君を褒める。

パートナー:「銅メダル、おめでとう!」
リーダー:「3組しか、いないんですけど。」
パートナー:「3位は、3位よ(笑)。」

 挑戦だけが、チャンスを作る。目指せ、すうぱあ中年! 日本武道館で開催される全日本シニア選手権に向けて、まい進する40代チビ・ハゲカップルであった。(笑)


☆ところで、ダンス上達のコツとは、互いに褒めちぎること? (笑)

著者名 眼科 池田成子