社交ダンス物語 93 これには訳あり

コラム

 先日、久しぶりに実家の寺へ行った時のこと。冷蔵庫を開けると、そこにはなめ茸(味付けえのき)のビン詰が、7個あった。いずれのビンも開封されており、中身は一食分ばかり減っている。
『ひょっとして、はじまったのか?』
これは認知症の前駆症状? 心中穏やかならず(涙)。母親の部屋へ行き、様子を窺う。僧侶である母上は普段と変わらぬご様子で、難しそうな仏教書を読んでおられる。

 だがこれは、そう驚くことではないのかもしれない。筆者宅のマンションの冷蔵庫を開けると、似たような光景がみられるからだ。うちの冷蔵庫の中には、無造作にちぎられた魚肉ソーセージが、何本も入れてある。しかもいずれのソーセージの長さも、1本の約4分の3。前段のごとく、見る人にとっては奇妙で意味不明かも…?

 ダンスのレッスンの帰り道、車内での会話である。
リーダー:「成子さん、今日は持って来た?」
パートナー:「あ”、忘れた!」
リーダー:「あれが、見られないよ。」
パートナー:「仕方ないわ。コンビニで買ってくる。」
 
 パートナーは最寄りのお店で、魚肉ソーセージを購入する。さて、あるおうちの前にさしかかると、リーダーは車を徐行させた。
「来た、来た、来たっ!」
すると助手席のパートナーは目を光らせ、車の窓をソロソロと開けて狙いを定める。ターゲットに向かい、魚肉を放り投げた。
「ナイスキャッチ!」
リーダー・パートナー共に、歓声をあげる。
そう、お外では例のワンちゃん(ダンス物語・第88話)が、リーダーの車のエンジン音を聴きつけて、深夜でも勢い良く階段からかけ降りてくる。二本足で立ち上がり、「待っていました!」とばかりに構えをとったワンちゃんは、ストライクゾーンで投げ込まれた魚肉を「パコン」と軽やかな音を立てて、お口でキャッチ! そしてワンちゃん、しっぽを振って、したり顔。 このお見事?と呼ぶべき人と犬とによるコラボレーション(曲芸)は、仕事とダンスの疲れを癒して、明日への活力を与えてくれる(笑)。

 ちなみに、残った魚肉ソーセージはそのまま自宅へ持ち帰り、冷蔵庫の中へとしまう。筆者には好んで魚肉ソーセージを食べる習慣がないので、冷蔵庫の中には食べ残しのソーセージが増える一方だ。しかも銘柄は様々である。丸善、原信、ニッスイ、セブンイレブン…などなど。

 さて、待ちに待ったボジョレー・ヌーヴォーが解禁となった。これを機に秋の夜長は、おうちでワインと一緒に魚肉ソーセージの“テイスティング”というのも、乙なものであろう(笑)。


☆ 食べ過ぎと健康に留意して、ワンちゃんのご褒美の一日量は一本の4分の1と決めさせていただいております。(飼い主様、ごめんなさい) ところで、実家のなめ茸の真相はいかに? 親を詮索するのは、やめておきます。(苦笑)

著者名 眼科 池田成子