社交ダンス物語 91 リーダーとパートナーの会話 10

コラム

 盆暮れ正月なく、結婚のあてもなく、病院の講堂には毎晩のようにダンスの練習に勤しむ中年男女の姿あり。スポーツダンスは、怪我が付きものだ。練習中の事故で骨折することや、膝を故障したという話を聞く。自分達の練習においても、キケンがいっぱい。パートナーが勢い良く振り挙げた手足が、リーダーの股間や顔面を直撃!(苦笑) 組んで踊るスタンダードに至っては、お互いの膝が邪魔して、ひどくぶつかることがある。
 ある晩、ワルツの練習をしている時に、リーダーの悲鳴があがった。

リーダー:「痛っ! ヒザの骨、割れそうだ。」
パートナー:「ごめん。青あざが、また増えちゃったわね。」
リーダー:「お互いのタイミング、位置関係、距離感が悪いからだよ。」
パートナー:「そっか…。」(パートナーは考える)

 それから二人は組み直す。お互いの腕や手、腰など5カ所の接点が、正しいポジションにあるかどうかを確認する。社交ダンスでは、男性のリードを感じて女性は動き出すのであるが、二人の動きに一体感がなくてはダメ。音に早すぎても遅すぎてもダメ。

パートナー:「巧く踊るためには、男女のタイミング・位置関係・距離感は、とても重要となるわね。ところで『夫婦』においても、そうなのかしら?」
リーダー:「フーフ?」

先日、ダンスホールへ行った時のこと。(第90話)
「奥さんを、お借りします。」
パートナーを誘ってくれたお客さん、笑いながらそう言って、リーダーに会釈していたような…。


☆男女が組んで、美しく踊るのは、ムズカシイ…。

著者名 眼科 池田成子