競技用ドレスや燕尾服は、緻密に作られたスポーツウェアだ。一試合ごとにぐっしょりと汗にまみれるが、型くずれや光沢落ちを考慮すると、クリーニングはせずに干しておくのが一般的だ。カビが生えたらいけないからと、除湿と消臭をかけた自宅の『衣装部屋』には、新品をはじめ、着なくなった古いドレスや、リーダーの体重が今よりも20キロ多かった時にオーダーメイドした燕尾服まで吊るされている。
パートナー:「このままじゃ、ダンスの衣装が増え続けてしまう…。」
リーダー:「かつてはこれを着て闘ったと思うと、愛着が出て捨てられないなあ。」
パートナー:「勘違いドレス(ペアのラテンドレス)も、そうよね。」
リーダー:「誰かもらってくれる人、いないかな?」
パートナー:「昔のあなたのエンビ、競技選手としてあるまじきサイズだわ。それに、塩のふいたヨレヨレのエンビや年季の入った臭いドレス、もらってくれる人なんていないわ。やはり、捨てなきゃ。」
リーダー:「ゴミの日に、埋め立てゴミと一緒に出すのは、偲びがたいよ。」
パートナー:「埋め立てに未練あるなら、焼却はどう? 弟(お坊さん)に頼んで、エンビとドレスのお葬式をあげてもらいましょう。」
二度と着ないかつての戦闘服、『断捨離、断捨離…』と口ずさみつつ、捨てるに捨てられないリーダーとパートナーであった(苦笑)。
著者名 眼科 池田成子