社交ダンス物語 81 目指せ、究極のペアルック!

コラム

 思春期の頃、憧れたものといえば『ペアルック』。カレとペアのお洋服を着て手をつなぎ、遊園地へ行けたらいいな。どんなに楽しいだろうと、わくわく想像を膨らませていた時代があった。あれから20余年、その夢は叶わず。(涙) その代わりではないが、40を過ぎてオバサンに磨きがかかった今、光る石のついたペアのラテンドレスを着用のもと、好むと好まざるとにかかわらずリーダーと手をつなぎ、競技会のフロアへと入場。そこで、闘っている。(苦笑)
 
 春期新潟県スポーツダンス選手権大会は、ありがたくシニアラテンの決勝で踊らせていただいた。『勝つためのドレス』というキャッチフレーズがあるように、競技用ドレスの効果は絶大といえよう。フロアでは大勢のカップルの中で、目立たなければならない。観戦に来てくださるお客さまは、踊りはもちろんのこと、選手達の色とりどりの艶やかなドレスを見るのも、楽しみにしておられることであろう。
 
 さて、お客さまの目を喜ばせる競技用ドレス、“茶会に誂えた着物”とまではゆかなくても、同じものを毎回着続けるのはいかがなものか…。オーダーの場合はとても高価であるが、自分達はとてもラッキーで経済的なカップルだった。というのは、元・新潟県ラテンチャンピオンのプロの先生のペアのドレスが、リーダー・パートナー共にジャストフィットする。それで、先生が使用されなくなったドレスを、毎回のように喜んでお譲り戴いていた。しかし、その先生がスタンダードの試合に専念される今、今度は自分達でラテンのドレスをあつらえなければならないという事態が発生した。(それが、当たり前ですよね)
 
 『ペアのドレスを作るには、どうしたらよいだろう…』右も左も分からず。幸い練習場として利用させていただいている富山のダンスホールに、オーダードレスの広告があった。すがる思いでそのお店に、リーダーが電話予約を入れてくれた。それがご縁で、富山市内にあるお店へと足を運ぶことになった。
 
 店内はこじんまりして綺麗、流行の裾が広がったスタンダードのドレスが、何着か展示されていた。店員さんは、元・全日本ラテンチャンピオンの和田恵先生に似た、目ヂカラのある素敵な女性であった。
パートナー:「はじめまして、競技会で着るペアのラテンドレスをお願いしたいのですけど。」
店員さん:「当店では、競技用ラテンドレスを作った経験がございません。」
パートナー:「?!……。」
店員さん:「ご希望のデザインはありますか?」
パートナー:「これと同じものを、作っていただけますか?」
 ダンスビュー(ダンス雑誌)の5月号に掲載されているコッキ&ユリア組が、アジアオープン・プロフェッショナル・ダンス選手権で闘っている写真を見せる。パートナーのユリア選手着用のドレスは、横から見たらほぼ全裸。
店員さん:「……。」

 ロダンの『考える人』のごとく、店員さんは優勝したコッキ組の写真をじっと見つめて考え込んでいる。それからチビのクライアントを観察、再び考え込む。打ち合わせ開始から1時間半経過、店員さんは初めての競技用ラテンドレスの制作を引き受けてくれた様子。色合わせが始まった。モチーフを考え、生地を探してきますと彼女はやる気満々、次の打ち合わせの段取りとなった。
 
 さて、どんなドレスが仕上がるでしょう? 秋に予定されている新潟県選手権・シニアラテンアメリカンでは、新作のペアの戦闘服を纏ったチビ・ハゲを、応援して下さいね。(笑)

著者名 眼科 池田成子