ダンス昇級を目指して、毎晩のように病院の講堂で練習をしているリーダーとパートナーの私。日曜の夜は気分を変えて、富山のダンスホールへ行くようにしている。一般にダンスホールには窓がない、もしくは窓はあっても暗幕で覆われている。そして外部と遮断されていて、中はうす暗いことが多い(まるで、眼科検査室のよう)。社交ダンスの人口は高齢化しているといわれるが、そこで踊っているお客さん達は皆さん年齢不詳だ。ある日のこと、パートナーはホールのお客さんから声をかけられた。
お客さん:「ここであなた方みたいな、若い人が見られて楽しいわ」
パートナー:「……。」
お客さん:「20代でしょ」
パートナー:「コワくて、申し上げられません」
そこで早速リーダーに耳打ちする。
パートナー:「私、20代に見える?」
リーダー:「……。」
パートナー:「そういえば、未成年と間違われた時もあったわ。 あなたのような若いお嬢さんに踊ってもらえて、嬉しいって」
リーダー:「それは大変だ。白内障か緑内障かもしれない。成子さん、その人の目を診てあげなきゃ!」
ホールでタンゴの練習をしていると、今度はリーダーに声がかかった。
「おにいちゃん、その手(女性の背中を支える男性の右手)はダメ。指が開いていて、みっともない。右肩も上がって、格好悪いよ。」
見るに見かねてだろう。プロの先生は、汗をかきながらタダで熱心にリーダーを指導してくれている。
富山のダンスホール、そこは私達にとって快適な空間。有難くも常連のお客さん達から、リーダーと私は可愛がっていただいている。サンドイッチやワッフルなどのおやつを笑顔で下さる美しいご婦人、「頑張っているわね」とご褒美に練習用のスカートを下さるスラリとした素敵なマダム、パソ・ド・ブレを踊ったらホールの皆さんから拍手してもらったこともあった。(お遊戯している園児を褒めるかのよう?)
紳士・淑女の社交場といえる『ダンスホール』、そこでは40代チビ・ハゲカップルは、まだまだ『お子さま』なのでした。(笑)
☆ うす暗いホールにて
「あなた20代?」
これぞ、究極の『社交』!!
著者名 眼科 池田成子