社交ダンス物語 77 『222』の奇行? 東京遠征

コラム

 どの世界も、そうなのだろうか? 勝負するなら、華の『東京』といわれる。競技ダンスも然り。東京で開催される競技会は、地方で開催される競技会よりもハードルが高いといわれる。関東甲信越ブロックの試合に、くまなく出場してきたリーダーとそのパートナーの筆者だが、昨年にひき続き、東京都内で開催される東部総局の競技会に挑戦することにした。
 
 競技種目はスタンダード2種目総合、スロー・フォックストロットとクイックステップだ。試合には267組のカップルが出場。1次予選から5次予選を通過し、準決勝を勝ち抜き、決勝にまで進んだ6組のみが昇級となる。
 
 試合当日、我々に与えられた背番号は、222であった。『222』といえば、先月の2月22日の出来事を思い出す。その日、5人の患者さまの目を執刀させていただいた。手術当日の朝の回診時に、緊張しておられる患者さまにリラックスしていただくため、こんなギャグを言った。

「皆さま、今日は2月22日です。何の日か、ご存知ですか? にゃんにゃんにゃん、ネコの日です!」
 
 患者さま、固い表情のまま、誰ひとり笑って下さらず。ギャグは、はずすと寒い。眼科の池田、さらに付け加える。

「2月22日は、聖徳太子の誕生日です」
 患者さまからは、何の反応もなし。(涙)そこで池田、もう一声。

「2月22日は、私の叔父さんの誕生日です!」

「はっはっは…」
 その日手術を受けられる最年長の女性患者さま、愛想笑いをなさった。しかも目は全く笑わず、表情は固いままで…。(寒いっ、寒すぎ! 2月22日は何と言っても、患者さまにとってはご自身が手術を受けられる日でした。)

 話が脱線してしまった。競技会へと戻そう。会場は浅草にある東京都立産業貿易センター、ちょうど一年前もここで開催された試合に挑戦して、散々な結果であった。(ダンス物語・第58話) 競技で踊る時間は1種目わずか1分半だが、出場組数が多いため、1次予選は開始から終了まで90分かかる。1次予選のクイックステップでは、踊っている間はリーダーと足がぶつかりっぱなし。今回も1コケかと思ったが、2次予選進出となる。(ほっ)

「なぜ足がぶつかるんだ? あれっ ステップ忘れた!」
リーダーの口から、競技選手として耳を疑うような言葉が発せられた。

 どうこうしているうちに、2次予選が始まった。『222』という背番号が、会場内でアナウンスされた。いざ出陣!という時に、隣にはリーダーがいない。慌てて辺りを見渡すと、フロアの隅の方で小首を傾げながら、ステップを確認しているリーダーの姿あり。すでに曲は始まっている。パートナーに腕を引っ張られ、駆け足で入場となった。
 
「私がジャッジだったら、出遅れる選手にはチェックは入れないわ」
「間に合ったじゃない。足がぶつかる理由を、考えていたんだよ」
 踊り終えてぶつぶつ言うパートナーをよそに、リーダーはひとり頷きながらシャドーを踏んでいる。

『極楽とんぼ』のリーダー君が試合に出遅れた時点で、2次予選で終わりと思ったが、幸運にも、もう1回踊れることに…。

 一昨年前の試合に比べると、今回の試合は帰りのJRの時刻まで『超暇』とはならず、夕方まで会場に居残ることができた。技も身長もなく、髪の毛も少ない40代チビ・ハゲカップルは、『究極の男女の美』を『ダンス』に求めつつ、次の試合に向けて華の東京を後にしたのであった。(笑)

著者名 眼科 池田成子