大寒の中、省エネのためエアコンを切った病院の講堂には、寒さに負けじと毎晩のようにダンスの練習に励む40代独身男女の姿あり。春期競技会も近し。その日二人は、千葉大会の競技種目であるルンバの練習をしていた。
リーダー:「成子さん、ルンバは男と女の愛の踊りなんだよ。男と女の違いをはっきり見せなければ、競技会で勝ち上がれない」
パートナー:「男と女の違いですって? 医者には男も女もないわ。それに今は、女の方が強い時代よ」
リーダー:「……。それもそうですね」
寒い寒いと言いながらも、二人はダンスの練習を続ける。
パートナー:「そういえば、昔話しにあったわね。お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に…。昔は男と女は、それぞれの役割があったのね」
リーダー:「ダンスに関しては、今も昔も大有りだよ」
そこで二人は考える。男らしく踊るって何? 女らしく踊るって何? 男と女の愛の表現って何?
パートナー:「恋人同士でルンバを踊れば、観客から声援を受ける素晴らしい踊りが出来るでしょうね」
リーダー:「ダンスは、なりきることが必要なんだよ」
ダンスパーティーで、どのご婦人も『僕の恋人』と、ときめいて踊るというリーダーは、プロも顔負けのラテンダンサーでしょうか?(笑)
著者名 眼科 池田成子