さて、ダンス愛好家にとって、年末年始はダンスパーティーで賑わう季節。ここで、社交ダンスに馴染みのない方のために、ご説明させていただこう。パーティーの会場では通常、四方の壁に沿ってずらりと一列に椅子が並べられている。女性は椅子に座り、男性からのお誘いを待つ。通常は一曲もしくは数曲をお相手と踊り終えると、挨拶の後に男性は次の女性をお誘いする。パーティーでの2大マナーは、男女ともに清潔である(臭くない)こと、男性は女性に対して失礼でないこと。
これはリーダーから聞いた話である。あるダンスパーティーに参加した時のこと、かなりご高齢と思われるご婦人が誘われることなく、ぽつんと座っておられたので、彼がお誘いしたところ丁度サンバの曲がかかった。ルンバやチャチャチャに比べ、サンバは苦手という方は少なくないので、念のためそのご婦人に確認したという。
「サンバ、お願いして宜しいでしょうか?」
「はい、お願いします!」
腰の曲がったそのご婦人は、笑顔で立ち上がった。ところが、問題はそこから起きた。シニアラテンA級の肩書きを持つリーダーであるが、彼女には自分のリードが全く伝わらなかったという。社交ダンスは男性のリードに合わせて女性が踊るものだが、何を仕掛けてもご婦人は立ち止まったまま。
『この限られた時間、女性を楽しませなければならない…女性を綺麗に見せなければならない…女性に恥をかかせてはいけない…』
リーダーは焦った。どうしたら、彼女を踊らせることが出来るのだろうかと頭の中はぐるぐる渦巻く。そして彼はひらめいた。
「普段サークルでしていらっしゃるステップを、教えていただけますか?」
するとそのご婦人は先程とは別人のごとく、水を得た魚のように活き活きと軽快に踊り出されたという。彼は彼女のステップに合わせて踊ったそうだ。
かくしてリーダーは、ダンスパーティーにおいて『男の責務(?)』を、無事果たしたのであった。
★そういえば、筆者が初めてダンスパーティーでお客さんからサンバを誘われた時、「これしか踊れません!」と言って、始めから終わりまで競技の足型で踊り通したことがありました(ダンス物語・第13話)(笑)。
著者名 眼科 池田成子