社交ダンスでは、男女が手と手をつなぐところから始まる。相手を思いやれば、ハンドケアも大切だ。ダンスのレッスンの前に、リーダーはハンドクリームをカバンから取り出し、入念に指や手に塗っている。つなぐ手と手が柔らかでつるつるしていれは、お互いに気持ちが良い。正直、ダンスパーティーでお相手の手がガザガザしていたら、「おっ!」と思ってしまう。
とはいえ、ダンスをたしなむ筆者の手は、荒れ放題だ。これは職業病なので、仕方がない。とくに外科系の医師は、手術の前にポピドンヨードやヒビテンなどの殺菌消毒液の原液で、入念に何度も手を洗う。厳重なる手洗い(手の滅菌)をすればするほど、真面目な主婦のごとくに医師の手は荒れてしまうのである。
だが自分は、ちまたのダンスパーティーに参加することは殆どない。ダンスで自分と手をつないでくれるのは、競技のお相手をしてくれているリーダーぐらいだ。パートナーの指にささくれがあって、ガサガサしてつなぎ心地が悪かろうが、競技の採点には影響しない。競技ダンスの場合、踊っていて自分達が気持ち良いかどうかではなく、側から見られてどうかに全てがかかっている。(リーダー君には、お気の毒?)
さて、『手あれ』をあきらめている筆者だが、過去にハンドクリームのお世話になったことがある。憧れの王子様との初デートの前夜だ(ダンス物語・第60話)。あの時は遅ればせながら、ハンドクリームを15分おきに熱心に手に塗り込んでいた。一日で目薬を一本使い切ってしまう患者さまもいらっしゃるが、そのお気持ちが、よぉ~く解るのである(笑)。
ところで、医師は手が荒れて当然と思っていたが、筆者の知る限り例外もある。ある皮膚科のお医者さま。その先生の手は、『手タレント』のごとく息を飲むほどに美しい。一体どんな高級美容クリームをお使いなのか、ユリの花のように美しい手のお手入れ法をおたずねしたところ、こんな答えが…。
「手は、洗わないことです」
えっ!先生、日に幾度も水イボや水虫の患者さまの手足を触っておられるでしょ?! 診察なさる度に、その手を洗わないの? さらにそのお医者さま、笑顔で誇らしげに美肌の極意を語る。
「マタとワキ以外は、石けんを使ってはいけません」
美肌をめざす読者の皆さま、今日から実践なさってみては? 石けん禁忌、手は極力洗わない、洗って良いのは『マタ』と『ワキ』。最初は、勇気がいるかもしれませんね(笑)。
☆ちなみに目も必要な時以外は、洗ってはいけません。涙の成分には、殺菌作用をもつリゾチームなどが含まれております。
著者名 眼科 池田成子