秋の競技会も、いよいよ幕開け。長野県大会の前日、ダンスの朝練をするため、病院の講堂へと向かう。ストレッチ運動をしているところへ、病院職員が入ってきた。
「本日ここで、糖尿病教室があります」
いつもは我が物顔で、病院の講堂を使わせていただいているリーダーと筆者だが、すごすごと退場(笑)。院内で、練習が出来そうな所を探す。ちなみに眼科外来で唯一使えるとしたら、視力検査表が二台置いてある長さ5メートルばかりの細長いスペース。しかし、そこはまるで『猫の額』。ワルツのナチュラルターン1回で、終わってしまう。病院の廊下では、直線上を移動するサンバは踊れるだろうが、あまりにも人目につきすぎ。高田のダンススクールも本日はお休みで、教室も使えない。近場でダンスの練習が出来そうな所を考える。
「そうだ! 今日は○○で、ダンスパーティーがある」
何と、静粛な社交ダンスのパーティー会場を、こっそりと競技ダンスの練習に使おうと考えているリーダー君。当然のごとく社交ダンスは、お客様の安全が第一である。他方、競技ダンスは動きが大きく、激しくぶつかって怪我をしやすいので、パーティー会場での競技選手同士の練習は、固くお断りという所も少なくない。
「小さく踊って、ステップの確認をしよう」
パーティーとなれば、いつものジャージー姿はさすがにはばかられる。そこで、ちょっとお洒落して(パートナーはスカートをはき、リーダーは香水をつけて)、二人は会場へと向かった。パーティーで、いきなり二人でバンバン踊ったら、マナーに反する。そこで、まずお誘いを待つことにした。リーターとは少し離れて、パートナーは椅子に座る。すると早速、殿方からお誘いが…。
「彼氏は大丈夫なの?」
「はい、あの人は彼氏ではありません」
ニッコリ笑って答える。競技選手であることがバレないよう、コンパクトホールドで小さく踊ろうとしたところ、いきなり体が宙にフワリ。一体何が起こったのだろう? 初めての人とワルツを踊るというのに、リーダーよりもパワフルでダイナミックなスイングが来た。パートナーの顔は、再びニッコリ。
普段は先生(コーチャー)かリーダーとしか踊らないが、その日はいろんな男性から踊ってもらった。女性は踊り出す前に相手と組んだだけで、その男性のレベルが判ってしまうと言われるが、まさにそう。しかし、喜んでばかりはいられない。パーティーで初めて踊ったお客さんの方が、4年間踊り続けているリーダーよりもリードが伝わるなんて、ショック。(涙…笑)
「成子さん、そろそろ踊ろう(練習しよう)か?」
「あなたと踊るよりも、お客さんの方が踊りやすいけど…」
「それは大問題だ!!」
ちなみにリーダー君は、映画『Shall we ダンス』主演の草刈民代さんに似ている、すらりと背が高いご婦人(サークルの先生らしい)に、お相手してもらったそうだ。本人はカッコイイ所を見せようとして、相当頑張って踊ったようだが、まるでお釈迦様の掌の中の孫悟空状態。相手は格段ウワテで、リードするどころか自分の動きを完全に読まれていたという。(笑)
パーティーでお会いした方々はお洒落で、ダンスもお世辞も上手。さすが、『社交』とは、このことだ。
「明日も○○でパーティーが開かれます。是非お越し下さい」
新参者の我々に、パーティーの無料券を下さった。お気持ちは嬉しいのだが、明日は試合を控えている。幸か不幸か、自分達は『競技選手』と思われなかったようである。(苦笑)
さて、話を競技会に戻そう。肝心の長野県大会の結果は…。JBDFスタンダードB級戦、一次予選で見事に敗退。(涙)
挑戦だけがチャンスを作る! 起き上がりこぼしのリーダー君、次のシニア新潟県大会に向けて、ダンスの練習に励むのであった。(笑)
著者名 眼科 池田成子