社交ダンス物語 63 「夢のオナーダンス?! 全日本シニア選手権」

コラム

 東日本大震災のため、各地で予定されていた春期ダンス競技会は、会場が崩壊、もしくは被災者の方々の避難所となり、相次いで中止。毎年6月に日本武道館で開かれる待望の日本インターナショナルダンス選手権大会も危ぶまれたが、東日本大震災チャリティーとして、幸いにも開催の運びとなった。

 この度の大震災で思ったこと…それは、普段当たり前と思っていたことは、何てありがたいことだったのだろう。ダンスができることって、とても幸せなこと。だから、「今」に感謝して、踊らないではいられない。昨年に引き続き、本大会の全日本シニア選手権・ラテンアメリカン部門にチャレンジした。

 プロの選手権では、世界チャンピオンである憧れのマイケル組が出場。迫力ある素晴らしい踊りを、アリーナ席で間近に観戦することができた。一方、アマチュアの部において、技も身長もなく、髪の毛も少ない自分達が選手権に出場するということは、主観的には勇敢なるチャレンジャー、客観的なら単なる身の程知らず?(涙)。

 昨年の同大会では1次予選敗退。当然のことながら、ノーチェックであった(ダンス物語 第42話)。だが、挑戦だけがチャンスを作る?(笑) 今年の目標は本大会の1次予選で、ワンチェックをもらうこと。他の選手の皆さんは予選を勝ち進み、準決勝、決勝へと進出して優勝を争うために出場するというのに、1次予選でワンチェックを目指す我々は、何とも控えめな競技選手だ(苦笑)。

 『勝つためのドレス』というキャッチフレーズがあるように、「美」と「技」を競い合う競技ダンスにおいては、ドレスの効果も絶大といえよう。今回の選手権は、元・新潟県ラテンチャンピオンのプロの先生からお譲り戴いた、光る赤い石がふんだんに付いたゴージャスなペアのドレス。人のふんどしで相撲をとるのが得意な我々だが、日本武道館の大ホールで、先生方のドレスがライトを浴びてフロアで一際映えることに期待する。(笑)
 
 昨年の競技種目は、チャチャチャとサンバであった。今年の競技種目は、愛の踊りといわれるルンバ、そして勇敢な闘牛士を連想させるパソ・ド・ブレ。これらは我々の不得意種目だ。なぜならば、パートナー(筆者)は女らしく色っぽく踊ることが全くダメ、そしてリーダーは男らしく力強く踊ることがチョー苦手ときている(苦笑)。だが、時には「自分達が一番!」という思い込みや、成りきりも必要(笑)。

「僕はマイケル(世界チャンピオン)になったつもりで踊るよ。成子さんは、ジョアンナさんだ!(彼の名パートナー)」

 いよいよシニア戦、1次予選が開始。日本全国から47組のカップルが出場した。我々の背番号は9番、第1ヒートであった。競技選手とは、本来勝つために闘うもの。でも自分達にとって、その時勝ち負けなど、頭にはなかった。憧れの日本武道館で、世界チャンピオンをはじめ日本の強豪達と同じフロアで踊らせてもらえるだけで感激。
「我が人生に、悔いはなし!」
夢中になって、踊る・踊る・踊るっ!(爆笑)

 その時、奇跡が起きた。ワンチェックどころか、絶対にあり得ないと思っていた1次予選を突破していたのだ!

 2次予選では満面の笑みで、大勢のお客様に向かって感謝の気持ちを込めて踊った。全日本シニア選手権2次予選進出、それは我々カップルにとって、まるでオナーダンスのようであった。(笑)


オナーダンス:その大会の上級クラスの優勝者に与えられる、栄誉あるソロ・ダンス。


著者名 眼科 池田成子