社交ダンス物語 60 「パートナー失恋する!?」

コラム

 昇級を目指して、盆・暮れ・正月なく、結婚のあてもなく(苦笑)ダンスの練習に励む40代独身のリーダーと私(パートナー)であるが、そんなオバサンの筆者だって夢をみることもある。そう、好きな人との幸せな結婚。(笑)何を隠そう、パートナーには2年前から、密かに憧れている王子様がいたのだ。
『しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで』
ダンスの練習をしている時も、ふとその人を想って、リーダーから「どうかしたの?」と尋ねられるくらいだから重症? 
 
 幸運にもある事がきっかけで、王子様と二人きりで、夕食するチャンスがあった。シンデレラになった気分のパートナー、ダンスのことはすっかり忘れて、グラスを傾けて王子様と暫し楽しいひとときを過ごした。でも、食事中は、時計が気になって仕方ない。ダンスの練習や病院の外来診療時間と違って、王子様と一緒にいる時間は、あっという間に過ぎてしまうのだから。
 
 時計の針が午前12時をまわる少し前、二人はお店を出た。12時になったら魔法が解けてしまうのではないかと、マジに思った。(笑)二人はベンチに腰掛けた。その晩は、月が綺麗だった。お別れ間際に王子様は、耳元でこうささやいてくれた。
「10年待って」
そして12時直前に、風のように去っていった。
『10年待ったら、あの人の奥さんになれる!』 
天に昇る気分のパートナー。(爆笑)
 
 さて、帰宅したのだが、冷静に考えてみると、10年とは余りにも長過ぎる。10年待てば、自分は50代半ばになっているのだ。子供じゃあるまいし、初めてのデートでそう言われて、いい年のオバサンが真にうけるのはちょっと変? そこで念のため、その数日後に王子様にメールを打った。
「10年待つって、本気にしていいの?」
しかし、何の返事も来ない。(涙)そこで、その翌日に、もう一度メールを送った。
「ひょっとして、私の勘違い? 10年待てば、結婚してもらえると思ってた」
すると彼から、すかさず電話がきた。
「そんな事を言った、記憶はありません」
 
 その翌日、悶々とした気分で、リーダーとダンスの練習をした。競技会は明日に迫っているというのに、踊っていても全く力が入らない。
「競技選手たるもの、結果の善し悪しを引きずってはいかん!」
リーダーから活を入れられつつ、休日の朝から病院の講堂でダンスの練習に励むパートナーであった。(涙…笑)


著者名 眼科 池田成子