社交ダンス物語 51 「医師、学会の後に…」

コラム

 盆・暮れ・正月なく、結婚のあてもなく(苦笑)ダンスの練習に勤しむ「ダンスばか」の筆者であるが、決して忘れてはならないことがある。それは、本業が医師であるということだ。日本臨床眼科学会参加のため神戸へ出張、学会に伴い11月10日から帰宅するまでの数日間、ダンスのカップル練習は一時中止となった。学会前日は、しょぼいダンスの練習着から一張羅に着替え、JRで神戸へと向かった。
 
 さて、田舎人の筆者が都会へ出ると、思いもよらぬハプニングに遭遇する。先ず、田舎人は都会では真っすぐに歩けない(笑)。神戸の三ノ宮駅の構内では、前後左右から、人、人、人の波。行きたい方向へ進めず、意に反してあさっての方向へ流される。なんとか無事に駅を出たところで、長蛇の列に出くわす。その先には、ワッフル屋さんが見えた。『きっと美味しいに違いない!』スーツケースを引きずり、田舎人は列の最後尾を探す(笑)。
 
 ワッフルをゲットした後、グルメの街神戸で『神戸牛ステーキ』の看板を横目に、そそくさとコンビニへと向かう。夕食用にサンドイッチと500mlの缶ビールを2本買うと、カバンの中に押し込んだ。それから『お医者さん』の顔をして、ホテルの送迎バスに乗り込む。会場はポートピアホテル。さすが、糸魚川では見られないゴージャスなホテルだ。ロビーを行き交うスタイリッシュな人々、そしてきらびやかで巨大なクリスマスツリーに、田舎の目医者は『目』を奪われる(笑)。
 
 翌日は、早朝から研究会が開催された。学会期間中はホテルに『缶詰』であった。そこでは三食おやつ付き。朝昼夕の各セミナー毎に、学会スポンサーである製薬会社から、神戸のスイーツ、各種ドリンクにボリュームのあるお弁当などがサービスされた。限られた時間を有効に使うため、会場ではセミナーを聞きながら食事をするというスタイルがとられた。トイレおよび各会場の移動以外は、歩くことなし。高カロリー高脂肪の食餌を与えられ、終日座わりっぱなし。学会4日目にもなると、真面目に学会に参加している医師達は、まるでブロイラーの飼育状態?(笑)。
 
 この4日間、ダンスの練習を休んでいた。そういえば、ピアノの練習には、このような教訓があった。「練習を1日欠かせば本人に分かり、3日欠かせば先生に分かり、7日欠かせば周囲に分かる」子供の頃、音楽家であった父からピアノのレッスンを受けていたが、鈍才の筆者は練習を1日さぼると、指が元の動きに戻るのに1日かかった。競技ダンスも然り? 
 
 神戸から帰ると、駅の改札口付近で、ジャージー姿のリーダー君が私を待ち構えていた。そう、競技ダンスの練習をするためだ。パートナーである私を拾って、試合に向けて早速練習が始まった。踊ったは良いが、2曲で息切れ。しかもルンバを踊ったとたんに、足のふくらはぎの筋肉が吊るという次第(涙)。体重はこの4日間で、1.5キロ増えていた。ヘソ周りのお餅も膨らんでいる。学会の後に、予想外のプチメタボ?
 
 あはれ、眼科医。9日後に控えた新潟県選手権の成績はいかに…?!



著者名 眼科 池田成子