社交ダンス物語 42 「観るなら本物」

コラム

 ダンスの競技会は、日本国内で数多く開催されているが、国内最高峰といえば、日本インターナショナルダンス選手権大会(略して、日本インター)だ。世界各国から審査員を招き、各国のトップクラスの選手が参加し、日本全国から選ばれた選手とともに、日頃鍛えた技を競い合う。毎年6月に日本武道館で開催されるが、プロ・アマをはじめジュブナイルからグランドシニアまで、幅広い年代の各種競技が行われ、熾烈な闘いが繰り広げられる。『良い踊りをするためには、本物を観るのが一番!』ということで、リーダーと私はこの度初めて、日本インターを観戦することにした。

 観戦は奮発してアリーナ席(2万円)。雑誌やビデオでしか見ることの出来ない一流の選手達の踊りを、まぢかに見た。その美しさと迫力に、リーダーも私もため息。自分達と同じ人間とは、とても思えない。何を隠そう、この大会に我々カップルも出場したのだ。(サプライズ!)現在の持ちクラスはシニアラテンA級、本大会の出場資格は一応ある。

「僕たちが出場したからといって、命を取られることはないだろう。」
身の程知らず!と萎縮しているパートナーをよそに、リーダー君は堂々としている。技も身長も髪の毛もないが、度胸だけはSA級だ(笑)。

 結果は散々とはいえ、憧れの日本武道館で、世界チャンピオンや一流選手達と同じフロアで踊らせていただいたことに感激! 観戦のクライマックスは、プロの決勝戦。ダンスクイーンの煌めくドレスに注目。ただ美しいだけでは、あのドレスは着こなせない。チャンピオンにふさわしい風格と、鍛え抜かれた身体の持ち主にのみに似つかわしいと言って、過言ではないだろう。国内外のトッププロの素晴らしい踊りに、観客席からは盛大な拍手が沸き起こった。

 さて、大会の翌日。せっかく華の東京へ来たのだから、糸魚川へ帰る前に世界の一流品を観るため、銀座4丁目の交差点にある「和光」という高級専門店に入った。店内は、まるで異次元空間? ダイヤやエメラルド、サファイアやルビーなどの宝石をふんだんにあしらった、まばゆいばかりの宝飾品や時計などが陳列されていた。商品の値札を見ると、ゼロの数が上越のジャスコ店とは4ケタ違う。競技会で、遥か格上の選手と一緒に踊らせていただいているおかげか、度胸だけは備わったようだ。にーくっぱ(2980円)のカバンを小脇に抱えながら、セレブなマダムになった気分で、私は宝飾品のフロアを闊歩した。世界チャンピオンのドレス同様に、こんなにゴージャスなジュエリーが似合うのは、クイーンと呼ぶにふさわしいエリザベス女王、そして歴史上の人物ならクレオパトラやマリア・テレジアかしら…など想像を巡らせショーケースの中を覗き込んでいたら、店員さんから声をかけられた。そこで、臆せず笑顔で一言。
「見事なジュエリーですわ。でも、日本人の肌をより美しく引き立ててくれるのは、翡翠かしら…。」

 それから岐路につく。糸魚川駅に着いて、駅のホーム脇に置いてある翡翠の大きな原石を見て、私はほっとした(笑)。本物に触れることが出来た、素晴らしいプチ旅行であった。


ちなみに筆者の、その日のディナーのメインは、オリエンタルスープ(カップ麺の汁)と新潟産コシヒカリのコラボレーション。やはり、本物は美味!




著者名 眼科 池田成子